一 刑訴法一八条一項、刑事訴訟費用等に関する法律二条三号と憲法二九条一項、三七条三項 二 訴訟費用の全部を被告人に負担させた裁判が憲法二九条一項、三七条三項に違反しないとされた事例
憲法29条1項,憲法37条3項,刑訴法181条1項,刑訴費用法2条3号
判旨
国選弁護人の費用を被告人に負担させることは憲法37条3項に違反せず、訴訟費用の負担を命ずるか否かは裁判所の裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
1. 国選弁護人の報酬等を被告人に負担させることは、憲法37条3項の弁護人依頼権を侵害するか。 2. 控訴審において第1審判決が破棄された場合、その控訴審費用を被告人に負担させることは、刑訴法181条1項の裁量の範囲内か。
規範
1. 憲法37条3項は、被告人の弁護人依頼権と国選弁護人の選任を保障するが、その報酬等の費用を国が負担することまで保障するものではない。2. 刑訴法181条1項本文に基づく訴訟費用の負担は、裁判所の広範な裁量に委ねられる。具体的には、当該事件の審理上必要と認められる処分のために要した費用であり、審理の経過・結果に照らして被告人に負担させることが相当な場合には、裁量の逸脱がない限り適法である。
重要事実
被告人が刑の言渡しを受けた事案において、原審(控訴審)は、第1審の未決勾留日数の算入不足という被告人側の主張を認めて量刑不当を理由に破棄自判したが、控訴審で要した国選弁護人の費用を含む訴訟費用の全部を被告人に負担させた。これに対し被告人側は、被告人に責任のない事由で破棄された場合にまで控訴審の費用を負担させることは違法・違憲であると主張して上告した。
あてはめ
1. 刑訴法181条1項但書が貧困者への配慮を規定し、同法500条が執行免除の申立を認めていることから、費用負担によって弁護人依頼権が実質的に害されるおそれは解消されている。 2. 本件控訴審は、量刑不当による破棄自判であったが、そのために要した費用は通常の訴訟に伴い生じたものである。また、被告人側は他にも事実誤認や法令違反を主張して審理を受けており、当該費用は被告人にとって必要なものであったといえる。したがって、これらを被告人に負担させることは裁量の範囲内であり、適法である。
結論
被告人に国選弁護人の費用等の訴訟費用を負担させることは合憲かつ適法である。
実務上の射程
刑事訴訟費用の負担は原則として被告人の負担とされており(刑訴法181条)、実務上も広く認められている。答案上は、憲法37条3項の保障範囲が「費用負担の免除」まで含まないことを端的に示す際に活用できる。また、裁量判断の枠組みとして「審理上の必要性」と「審理経過・結果からみた相当性」という指標は、他の訴訟費用の是非を検討する際にも参考となる。
事件番号: 昭和24新(れ)250 / 裁判年月日: 昭和25年6月7日 / 結論: 棄却
辯護人の報酬等の費用を何人に負擔せしめるかという問題は憲法第三七條第三項の規定の關知するところではなく法律をもつて適當に規定し得る事柄であるかと解すべきである。そして國選辯護人を選任するのは被告人の利益のためであるからその費用は被告人に負擔させるのが適當であつて若し被告人が貧困のためその費用を完納することができないとき…