辯護人の報酬等の費用を何人に負擔せしめるかという問題は憲法第三七條第三項の規定の關知するところではなく法律をもつて適當に規定し得る事柄であるかと解すべきである。そして國選辯護人を選任するのは被告人の利益のためであるからその費用は被告人に負擔させるのが適當であつて若し被告人が貧困のためその費用を完納することができないときは刑訴法第五〇〇條の規定によつて裁判所にその裁判の執行の免除を申立てることができる譯である。然らば刑事訴訟費用法が國選辯護人に給すべき報酬等を公訴に關する訴訟費用とする旨を規定したことは前示憲法の規定に違反するものではなく從つて原判決が被告人に對しその費用の負擔を命じたことは正當である。
訴訟費用を被告人に負擔させることの合憲性(憲法第三七條第三項)
憲法37條3項,刑訴法181條,刑訴法500條
判旨
憲法37条3項は被告人の弁護人依頼権と国選弁護制度を保障するが、その費用負担の帰属は規定しておらず、立法政策に委ねられている。したがって、刑の言渡しに際し国選弁護人の報酬等を被告人に負担させることは同条に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法181条1項等に基づき、国選弁護人の報酬等の費用を被告人に負担させることが、被告人の弁護人依頼権を保障する憲法37条3項に違反しないか。
規範
憲法37条3項は、刑事被告人に対し弁護人を依頼する権利を保障し、自ら依頼できない場合には国がこれを付すべきことを規定しているが、弁護人の報酬等の費用を誰に負担させるかについては関知しておらず、法律をもって適当に規定し得る事柄であると解される。国選弁護制度は被告人の利益のために存するものであるから、その費用を被告人に負担させることは適当であり、立法政策の問題である。
重要事実
被告人に対し、刑の言渡しとともに訴訟費用の負担が命じられた。この訴訟費用には、被告人のために国が選任した国選弁護人の報酬が含まれていた。弁護人は、憲法37条が国選弁護制度を無償の前提として規定していると主張し、国選弁護人の報酬を被告人に負担させる根拠となる当時の刑事訴訟費用法(現在の刑事訴訟費用等に関する法律)および刑事訴訟法181条1項等の規定は憲法違反であるとして上告した。
あてはめ
憲法37条3項の趣旨は、資力のない被告人にも弁護人の援助を確保することにあるが、これを「無償」で行うことまでを憲法が直接命じているわけではない。国選弁護人の活動は被告人本人の利益に資するものであるから、受益者負担の原則に基づき被告人に負担させることには合理性がある。また、被告人が貧困により完納できない場合には、刑事訴訟法500条に基づく執行免除の申立てという救済措置が用意されており、被告人の保護に欠けるところはない。したがって、裁判所が被告人に費用の負担を命じることは正当な立法政策の範囲内である。
結論
国選弁護人の報酬等を被告人に負担させることは、憲法37条3項に違反しない。
実務上の射程
判例は、国選弁護費用の負担を「立法政策の問題」と位置づけ、憲法上の無償性までは認めていない。答案上は、訴訟費用負担の合憲性を問われた際の規範として利用できるほか、刑訴法181条1項の「被告人に訴訟費用を負担させないことが明らかであると認めるとき」の解釈(裁量的免除)を論じる際の前提として機能する。
事件番号: 昭和29(あ)3293 / 裁判年月日: 昭和30年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国選弁護人の報酬等の費用を被告人に負担させることは、憲法37条3項に違反せず、法律によって適当に規定し得る事項である。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判において国選弁護人の選任を受けたところ、原判決(下級審)は、当該国選弁護人に支給された報酬等の費用を被告人に負担させる旨の決定を下した。これに対…