貸金業の規制等に関する法律二一条一項中の「人を威迫し」「その者を困惑させてはならない」の文言に対する憲法三一条違反の主張が欠前提で処理された事例
憲法31条,貸金業法21条1項
判旨
貸金業法21条1項(旧法)の「人を威迫し」「その者を困惑させてはならない」との規定は、明確性の原則に照らし、憲法31条に違反するほど曖昧ではない。
問題の所在(論点)
貸金業法21条1項(取立て行為の規制)における「人を威迫し」「その者を困惑させてはならない」との文言は、不明確ゆえに憲法31条(適正手続・罪刑法定主義)に違反するか。
規範
刑罰法規が憲法31条に違反するか否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、何が禁止されているのかの基準が読み取れる程度に明確であるかによって判断される。法文の文言が多義的であっても、通常の解釈指針に従い、具体的な適用基準が明らかであれば、明確性の原則に反しない。
重要事実
被告人らは、貸金業を営む中で取立て行為を行い、貸金業の規制等に関する法律(当時)21条1項違反に問われた。これに対し、被告人側は、同条項の「人を威迫し」「その者を困惑させてはならない」との文言が極めて不明確であり、罪刑法定主義(憲法31条)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
同条項の「威迫」とは、相手方に畏怖の念を生じさせるに足りる言動を指し、「困惑」とは、相手方に精神的自由を妨げられ、戸惑いや当惑を感じさせる状態を指すと解される。これらの用語は、日常用語としても社会通念上確立した意味を有しており、貸金業者による不当な取立てを規制するという立法目的に照らせば、禁止される行為の態様を一般人が予見することは十分可能である。したがって、文言があいまいであるということはできない。
事件番号: 昭和31(あ)914 / 裁判年月日: 昭和36年12月20日 / 結論: その他
一 原審が証拠により適法に認定した事実によれば、被告人は、利殖の目的をもつて原判示第二の(一)の日時場所において貸主としてA名義を使用し、Bに対し月七分ないし八分の利率をもつて金三〇万を貸し付けたほか、同様の方法で三回にわたり、同判示得第二の(二)ないし(四)の金員を同記載の利率をもつて貸し付けたというのであり、客観的…
結論
貸金業法21条1項の規定は憲法31条に違反しない。
実務上の射程
行政法や刑法における明確性の原則に関する基本判例である。法文の文言が一般的・抽象的であっても、日常用語や他の法領域での使用例、立法の趣旨等から客観的な判断基準が導き出せる場合は、合憲と判断される傾向にある。答案上は、不明確ゆえの無効を主張する際の反論、あるいは合憲性の論証として引用する。
事件番号: 昭和27(あ)6352 / 裁判年月日: 昭和30年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業等の取締に関する法律による規制は、憲法22条1項の保障する職業選択の自由を不当に圧迫するものではなく、公共の福祉による正当な制限として合憲である。 第1 事案の概要:上告人は、貸金業等の取締に関する法律(旧法)の規定が、憲法22条が保障する職業選択の自由を不当に圧迫し違憲であると主張して上告…
事件番号: 昭和28(あ)601 / 裁判年月日: 昭和30年4月22日 / 結論: 棄却
貸金業等の取締に関する法律第二条にいう「貸金業」の意義は当裁判所の判例(昭和二六年(あ)第八五三号同二九年一一月二四日大法廷判決)のとおりであつて客観的に観察して貸金業としての形態を備えることは右「貸金業」の要件には属しない。
事件番号: 平成6(あ)407 / 裁判年月日: 平成8年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業法2条1項にいう「貸金業」とは、反復継続の意思の下に金銭の貸付け等を行うものをいい、営利目的や特別の設備の備付までは不要である。 第1 事案の概要:被告人は、貸金業法11条1項に基づく登録を受けずに金銭の貸付けを行ったとして、無登録営業の罪に問われた。弁護人は、当該行為が「貸金業」に該当する…
事件番号: 昭和27(あ)159 / 裁判年月日: 昭和30年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一事件における第一審と控訴審の手続は、継続する一つの『危険』の各部分にすぎないため、控訴審が自判しても憲法39条後段の二重処罰禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が貸金業等の取締に関する法律違反(無届け貸金業)に問われた事案。第一審判決は懲役1年(執行猶予3年)及び罰金10万円の有罪判…