いわゆる成田第二次代執行妨害事件
判旨
社会運動の一環として行われた行為であっても、その手段、方法、規模、態様が社会通念上相当な範囲を逸脱する場合には、正当な行為として違法性が阻却されることはない。
問題の所在(論点)
社会運動や政治的主張の一環として行われた行為について、刑法上の違法性阻却事由(正当行為等)が認められるための限界。また、憲法上の諸規定を根拠に当該行為の違法性が否定されるか。
規範
行為の目的が社会的な主張を伴うものであっても、その手段、方法、規模、態様の相当性を欠く場合には、実質的違法性が阻却されることはない。憲法上の権利の行使を主張する場合であっても、他者の権利や公共の福祉との調整の観点から、態様が著しく不当なものは違法と判断される。
重要事実
被告人らは、自らの主張を実現するための社会運動等に関連して、一定の手段、方法を用いて特定の行為(詳細な行為態様は判決文からは不明)に及んだ。第一審および原審は、当該行為の規模や態様に鑑み、正当な行為には当たらないとして有罪判決を下した。これに対し被告人らは、憲法9条、13条、29条3項、31条、92条等に基づき、自らの行為は正当であり違法性が阻却されるべきであるとして上告した。
あてはめ
被告人らが行った本件各所為について、その具体的手段、方法、規模および態様を総合的に検討すると、それらは社会的に許容される正当な範囲を逸脱していると認められる。憲法が保障する諸権利を考慮しても、第一審が認定したような具体的な態様でなされた行為は、法秩序全体から見て正当なものとは認めることができず、違法性が阻却される余地はない。
結論
被告人らの行為は違法性が阻却されず、有罪とした原判断は正当である。本件各上告を棄却する。
事件番号: 平成5(あ)253 / 裁判年月日: 平成7年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】集団的な実力行使が正当な抵抗権の行使として憲法上保障されるかは、その行為の手段、方法、規模、態様を総合考慮して決せられるべきであり、違法性が阻却されない態様での行為は憲法違反を構成しない。 第1 事案の概要:被告人らは、凶器準備結集等の罪に問われた事案において、自らの行為は憲法上の抵抗権等に基づく…
実務上の射程
自救行為や正当行為の主張において、目的の正当性だけでなく、手段の相当性(必要最小限度か、他者の法益を過度に侵害していないか)が厳格に審査されることを示す。答案では、権利行使の文脈であっても、態様の過酷さや社会的相当性を欠く事実を拾い、違法性阻却を否定する際の根拠として活用する。
事件番号: 昭和49(あ)1200 / 裁判年月日: 昭和52年5月6日 / 結論: 破棄差戻
一 角材の柄付きプラカード等を所持して集団示威運動を行つていた学生集団の先頭部分の学生のうち、所携の右プラカード等を振り上げて警察官をめがけて殴りかかつている状況を相互に目撃し得る場所に近接して位置し、しかもみずから警察官に対し暴行に及んだ者あるいは暴行に及ぼうとしていた者についてまで、右行為は各自の個人的な意思発動に…
事件番号: 昭和57(あ)1653 / 裁判年月日: 昭和58年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人らによる行為が正当防衛の要件を満たさず、かつ現行犯逮捕の手続にも違法な点がない場合、憲法31条、33条等の規定に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人ら9名が特定の所為(詳細は判決文からは不明)に及んだ事案。被告人らは、自らの行為が正当防衛に該当し違法性が阻却されること、及び捜査機…
事件番号: 昭和56(あ)235 / 裁判年月日: 昭和57年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法208条の2第1項(凶器準備集合罪)は、処罰の実質的根拠があり、その規制範囲が広汎すぎたり不明確であったりするとはいえず、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、凶器準備集合罪(刑法208条の2)の規定が、処罰の実質的根拠に乏しく、規制範囲が広汎かつ不明確であると主張して、憲法…
事件番号: 昭和50(あ)1860 / 裁判年月日: 昭和51年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判における分割裁判(分離公判等)の実施は、受訴裁判所の合理的な裁量の範囲内に属し、その裁量を逸脱しない限り、憲法31条や37条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人側が、第一審において行われたいわゆる分割裁判の実施について、憲法37条(公平な裁判所の迅速な裁判)、31条(適正手続…