死刑事件(長崎市の妻等3名殺害事件)
判旨
死刑の科刑が許容されるか否かは、犯行の罪質、態様、動機、殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって罪刑の均衡、一般予防の観点からもやむを得ない場合に認められる。
問題の所在(論点)
殺害された被害者が3名に及び、犯行態様が残虐である一方で、前科がなく改悛の情が認められる被告人に対し、死刑を選択することが刑の量定として正当といえるか(死刑選択の許容性)。
規範
死刑の選択については、永山事件判決(最判昭58.7.8)の示した判断枠組みを維持し、犯行の罪質、動機、態様(特に殺害方法の残虐性・執拗性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮する。これらに照らし、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からもやむを得ないと認められる場合には、死刑の選択が許容される。
重要事実
被告人は、怨恨および金品奪取の目的から知人とその連れの2名を殺害し、その翌日、生命共済金取得の目的等から自らの妻を殺害した。合計3名の生命を相次いで奪ったものであり、犯行には計画性が認められた。殺害の手段として木製バット、ベルト、ロープを用い、その方法は残忍かつ執拗であった。一方で、被告人には前科がなく、犯行後に改悛の情が見られるという事情も存在した。
あてはめ
まず、動機面では金品奪取や共済金取得という利欲的目的が含まれ、かつ計画的な犯行である。次に、被害者が3名という結果は極めて重大である。また、バットやロープを用いた殺害態様は残忍かつ執拗であり、罪質・態様ともに悪質性が高い。被告人に前科がなく改悛の情があるという有利な事情を考慮しても、短期間のうちに3名の生命を奪った罪責の重大性はこれらを凌駕し、罪刑の均衡および一般予防の観点から死刑の科刑はやむを得ない。したがって、第一審・控訴審の死刑判決は正当である。
結論
本件各強盗殺人罪等の成立を肯定し、死刑を言い渡した原判断は正当であり、死刑の科刑は是認せざるを得ない。
実務上の射程
死刑存置論を前提とする憲法判断(13条・36条)を維持しつつ、実務上は「永山基準」に基づく総合評価の具体例として位置づけられる。特に、殺害人数が複数(3名)であること、利欲的動機、計画性、執拗な殺害方法が認められる場合には、前科のない初犯であっても死刑が維持される可能性が高いことを示す事例である。
事件番号: 昭和60(あ)956 / 裁判年月日: 平成3年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の犯罪歴、反省の程度、生育歴等の諸要素を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であって、やむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、ギャンブルによる借金返済のため、多額の現金を保管している知…
事件番号: 平成8(あ)826 / 裁判年月日: 平成13年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑の選択がやむを得ないといえる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、交際相手への送金等の資金に窮し…