死刑事件(男娼等連続強盗殺人事件)
判旨
死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状などの諸事情を併せ考慮し、罪責が極めて重大であって、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。
問題の所在(論点)
死刑判決を下す際の量刑判断基準(死刑適用基準)の妥当性、および少年時の犯行を含む複数件の強盗殺人案において死刑を選択することの可否。
規範
死刑の適用は、刑法9条、11条、および刑事訴訟法411条等の趣旨に照らし、①犯行の性質、②動機、③態様(殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状(謝罪、賠償等)を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑均衡の観点からも一般予防の観点からも極刑がやむを得ないと認められる場合に、慎重に選択されるべきである。
重要事実
被告人は、約6年の間に、金欲しさから行きずりの売春婦や男娼を対象に、合計4件の冷酷・残忍な強盗殺人を行った。犯行の一部は被告人が少年時代に行われたものであり、被告人は公判過程で被害者遺族に対し慰謝料の提供や謝罪の意思を示していた。また、被告人の生育歴や資質といった事情も存在していた。
あてはめ
本件では、金銭目的で落ち度のない被害者を4人も殺害したという「犯行の性質・動機」は極めて卑劣であり、「結果の重大性」は著しい。犯行の一部が「少年時代の犯行」であることや、「遺族への慰謝料提供・謝罪」という犯行後の情状、さらには「生育歴・資質」といった被告人に有利な事情を十分に斟酌したとしても、6年間で4度も強盗殺人を繰り返した刑事責任は極めて重大である。したがって、これらの諸事情を総合評価しても、死刑の選択が不当であるとはいえない。
結論
被告人を極刑(死刑)に処した一審・二審の量刑判断を維持し、上告を棄却する。
実務上の射程
通称「永山基準」として知られる死刑適用の判断枠組みを確立した最重要判例である。答案上では、死刑の適否が争点となる場合に上記9つの要素(特に被害者数)を引用し、具体的事実を各要素に分類して「罪責が極めて重大」といえるかを論理的に説明するために用いる。
事件番号: 昭和60(あ)956 / 裁判年月日: 平成3年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の犯罪歴、反省の程度、生育歴等の諸要素を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であって、やむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、ギャンブルによる借金返済のため、多額の現金を保管している知…
事件番号: 昭和50(あ)189 / 裁判年月日: 昭和53年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の動機、態様、残虐性、結果の重大性、社会的影響等の諸般の事情を慎重に考慮し、その刑責が極めて重大であると認められる場合には、死刑を選択することもやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、一人暮らしの老人等を短期間に連続して襲撃した。犯行内容は、1件の強盗、1件の強盗未遂…
事件番号: 昭和63(あ)352 / 裁判年月日: 平成6年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、とりわけ殺害された被害者数の多さや結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、罪責が極めて重大であって罪刑の均衡、一般予防の観点からもやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和…