死刑事件(宝石商夫婦強殺事件)
判旨
死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、結果、社会的影響等の諸要素を総合考慮し、被告人の罪責が誠に重大であって極刑がやむを得ない場合に認められる。
問題の所在(論点)
死刑の選択(量刑)が、被告人の生育歴等の情状を考慮してもなお、刑事訴訟法411条を適用して破棄すべき不当なものといえるか(死刑選択基準の該否)。
規範
死刑の適用にあたっては、①犯行の罪質、②動機、③態様(殺害方法の残虐性等)、④結果の重大性(殺害された被害者数等)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦被告人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状の諸点(いわゆる永山基準)を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地からもやむを得ないといえる場合に限り、許容される。
重要事実
被告人は、パチンコ等の浪費により生活費に窮したことから、面識のある宝石商夫婦(当時70歳と58歳)を殺害して金品を強取しようと企てた。あらかじめ用意した小刀を用いて、両名の腹部や胸部等を多数回突き刺して殺害し、現金を強奪。さらに、その金を使い果たした3日後、凄惨な殺害現場に再び戻り、死体から宝石類を剥ぎ取って窃取した。
あてはめ
本件は、利欲目的で2名の尊い生命を奪った強盗殺人事件であり、あらかじめ凶器を準備し多数回突き刺すという態様は残虐である。また、殺害から3日後に現場に戻り死体から宝石を奪うという犯行後の行動は冷酷非道であって、罪質、動機、結果ともに極めて重大である。被告人の生育歴という有利な事情を考慮しても、これら諸事情に照らせば、被告人の罪責は誠に重大といえる。
結論
原判決が維持した第一審の死刑判決は、やむを得ないものとして是認せざるを得ず、不当ではない。
実務上の射程
死刑存置論を前提とした実務上の判断枠組みを再確認する事例。答案上は、殺害人数(2名以上)や犯行態様の残虐性、強盗殺人という罪質の重さを「永山基準」の各要素に当てはめて、死刑選択の相当性を論じる際のモデルとなる。
事件番号: 昭和46(あ)88 / 裁判年月日: 昭和48年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、特に殺傷の手段方法の残虐性、結果の重大性、社会的影響、被告人の経歴、犯行後の情状等の諸般の事情を慎重に考慮し、その責任が極めて重いと認められる場合には、やむを得ないものとして許容される。 第1 事案の概要:被告人は遊興費を入手する目的で、2回にわたり周…
事件番号: 平成21(あ)776 / 裁判年月日: 平成24年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の命を奪った強盗殺人事件において、計画性、犯行態様の残虐性、結果の重大性、遺族の処罰感情、及び犯後の情状を総合考慮し、死刑の選択を是認した事例。 第1 事案の概要:被告人は、強盗目的で知人宅を訪れ、凶器(鈍体及び緊縛用の針金)を準備した上で、知人夫婦(2名)を相次いで襲撃した。犯行態様は、頭部…
事件番号: 平成8(あ)826 / 裁判年月日: 平成13年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑の選択がやむを得ないといえる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、交際相手への送金等の資金に窮し…