公訴棄却の裁判をしない旨の裁判所の見解の表明に対する特別抗告の適否
刑訴法433条
判旨
公訴提起の手続の違法を理由に公訴棄却を求める申立ては、裁判所の職権発動を促すものにすぎず、これに応じない裁判所の見解表明に対して特別抗告を申し立てることはできない。
問題の所在(論点)
公訴提起の手続に違法があることを理由とする公訴棄却の申立てに対し、裁判所がこれを認めず実体審理を進める旨の見解を示した場合、当該判断に対して刑訴法433条1項の特別抗告を申し立てることができるか。
規範
被告人側による公訴棄却の申立ては、裁判所の職権発動を求める趣旨のものにすぎず、裁判所はこれに対して採否の判断を示すことを要しない。また、職権を発動しない旨の見解が示された場合であっても、不服があるときは終局裁判に対する上訴によって争うべきであり、独立して刑訴法433条1項の特別抗告の対象とはならない。
重要事実
申立人は、被告事件の公訴提起の手続に違法があるとして、裁判所に対し公訴棄却の裁判を求めた。これに対し、原審は当該違法はないとして公訴棄却の申立てを採用せず、実体審理を進める旨の見解を表明した。申立人は、この原審の見解を不服として、刑訴法433条1項に基づき最高裁判所に特別抗告を申し立てた。
あてはめ
申立人が行った公訴棄却の申立ては、裁判所に対して職権行使を促すものにすぎない。裁判所が実体審理を継続する見解を示したことは、職権を発動しない旨の意思表示であり、これに対して直ちに不服を申し立てる制度上の必要性はない。申立人の不服は、後の終局裁判(判決)に対する上訴の中で主張すれば足りるため、本件申立ては特別抗告の要件を欠くといえる。
事件番号: 昭和57(し)27 / 裁判年月日: 昭和57年3月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人による公訴棄却の申立ては、裁判所の職権発動を求める趣旨にすぎず、裁判所がこれに応じない旨の見解を示したとしても、独立した不服申立ての対象とはならない。これに対する不服は、終局裁判に対する上訴の中で主張すべきである。 第1 事案の概要:弁護人が、公訴提起後2か月以内に起訴状謄本が被告人に送達さ…
結論
本件抗告は、特別抗告の要件を欠き不適法であるため、棄却されるべきである。
実務上の射程
公訴棄却事由の存否に関する裁判所の合憲的な中間判断に対し、即時抗告等の定めがない場合に、特別抗告による不服申立てを封じる実務上の指針となる。答案上は、公訴棄却事由(公訴権濫用等)を主張した際の中間的な不服申立ての可否を論じる場面で、職権発動を促す趣旨にすぎないという論拠として活用できる。
事件番号: 昭和44(し)19 / 裁判年月日: 昭和44年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人等による公訴棄却の申立ては、裁判所の職権発動を促すものにすぎず、これに対する却下決定は刑事訴訟法433条1項の特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:被告人側(あるいは抗告人)が、公訴棄却を求める申立てを行った。これに対し、裁判所が当該申立てを却下する旨の決定を下したため、申立人はこ…
事件番号: 昭和41(し)43 / 裁判年月日: 昭和41年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公訴棄却を求める申立ては裁判所の職権発動を促すものにすぎず、却下決定に対しては終局裁判に対する上訴によって不服を申し立てるべきであるから、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:申立人が、裁判所に対し公訴棄却を求める申立てを行ったところ、裁判所がこれを却下する旨の決定をした。これに対し、申…
事件番号: 昭和51(し)22 / 裁判年月日: 昭和51年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定に対する異議申立てを棄却する旨の決定は、刑事訴訟法433条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。したがって、かかる決定に対して同条に基づく特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:弁護人は、公判期日において、検察官…
事件番号: 昭和57(し)119 / 裁判年月日: 昭和57年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の理由として憲法違反や判例違反が主張されていても、実質が単なる法令違反の主張にすぎない場合には、刑事訴訟法433条の抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原判断に判例違反および憲法違反があるとして特別抗告を申し立てた。しかし、その主張の内容を精査したところ、原判断は引用され…