公訴棄却の決定をしない旨の見解の表明に対する特別抗告の適否
刑訴法433条
判旨
弁護人による公訴棄却の申立ては、裁判所の職権発動を求める趣旨にすぎず、裁判所がこれに応じない旨の見解を示したとしても、独立した不服申立ての対象とはならない。これに対する不服は、終局裁判に対する上訴の中で主張すべきである。
問題の所在(論点)
弁護人による「公訴棄却を求める申立て」を退ける旨の裁判所の判断に対し、刑訴法433条1項に基づく不服申立て(特別抗告)をすることが認められるか。
規範
被告人側による公訴棄却の申立ては、裁判所に対して刑事訴訟法に基づく職権発動を促す趣旨のものにすぎない。したがって、裁判所はその採否について判断を示す義務を負わず、職権を発動しない旨の見解が表明されたとしても、それは独立して特別抗告(刑訴法433条1項)の対象となる「裁判」には当たらない。かかる不服は、終局裁判に対する上訴の手続きにおいて解消されるべきものである。
重要事実
弁護人が、公訴提起後2か月以内に起訴状謄本が被告人に送達されていないと主張し、公訴棄却の決定(刑訴法339条1項1号参照)を求めた。これに対し、原審は起訴状謄本の送達は有効であると判断し、公訴棄却の決定をしない旨の見解を表明した。弁護人はこの原審の判断を不服として、最高裁判所に特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件における弁護人の申立ては、裁判所に対して公訴棄却という職権行使を促すものにすぎない。これに対し、原審が送達を有効と認めて公訴を維持する姿勢を示したことは、職権を発動しない旨の内心的判断を表明したものといえる。このような職権不発動の判断は、それ自体が確定的な裁判として独立した抗告の対象となる性質のものではない。被告人側において、起訴状送達の無効に基づく公訴棄却の事由があると考えるのであれば、後の判決という終局裁判に対する上訴の中で、その手続の違法を主張することで救済を求めるべきである。
事件番号: 昭和59(し)9 / 裁判年月日: 昭和59年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公訴提起の手続の違法を理由に公訴棄却を求める申立ては、裁判所の職権発動を促すものにすぎず、これに応じない裁判所の見解表明に対して特別抗告を申し立てることはできない。 第1 事案の概要:申立人は、被告事件の公訴提起の手続に違法があるとして、裁判所に対し公訴棄却の裁判を求めた。これに対し、原審は当該違…
結論
本件抗告は、刑訴法433条1項所定の不服申立ての要件を欠き、不適法であるため棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における職権発動を促す申立て(公訴棄却の申立て、証拠調べの申立て等)に対し、裁判所がそれに応じない決定や見解を示した場合、原則として独立した抗告は許されないという準則を示すものである。答案上は、中間的な決定や職権行使の判断に不服がある場合の救済手段は、原則として終局判決に対する上訴に集約されるという文脈で使用する。
事件番号: 昭和26(し)103 / 裁判年月日: 昭和27年12月27日 / 結論: 棄却
旧刑訴第三四四条第二項に基く証人尋問の決定は、刑訴応急措置法第一八条第一項にいわゆる「不服を申し立てることができない決定」にあたらない。
事件番号: 昭和63(し)53 / 裁判年月日: 昭和63年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べに関する異議申立てを棄却した決定に対し、不服申立てを行うことは認められない。裁判所の証拠調べに関する裁量的判断を尊重し、訴訟手続の遅延を防止する観点から、抗告は不適法とされる。 第1 事案の概要:福岡地方裁判所において行われた証拠調べに関し、当事者が異議を申し立てたが、同裁判所はその異議を…
事件番号: 昭和51(し)22 / 裁判年月日: 昭和51年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定に対する異議申立てを棄却する旨の決定は、刑事訴訟法433条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。したがって、かかる決定に対して同条に基づく特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:弁護人は、公判期日において、検察官…