捜査及び起訴の差別的取扱を理由とする憲法一四条、三一条違反の主張が理由なしとして排斥された事例
憲法14条,憲法31条
判旨
被告人に対する捜査および公訴の提起が、法の下の平等や適正手続に反して違憲・違法となることは、特段の事情がない限り認められない。
問題の所在(論点)
検察官による特定の捜査および公訴の提起が、憲法14条(平等原則)や憲法31条(適正手続の保障)に違反し、刑事訴訟法上の公訴棄却等の対象となるか。
規範
公訴権の行使が検察官の裁量に委ねられている(刑事訴訟法248条)ことに鑑み、特定の被告人に対する公訴の提起が憲法14条(法の下の平等)や31条(適正手続)に違反し無効となるのは、当該訴追が裁量権を著しく逸脱し、公訴権の濫用と認められる特段の事情がある場合に限られる。
重要事実
本件において、被告人は捜査および公訴の提起が憲法14条および31条に違反するとして上告した。しかし、原判決が認定した事実関係によれば、当該捜査・起訴プロセスにおいて差別的な取り扱いや正当な手続の逸脱を基礎付ける具体的な事情は認められなかった。弁護人は事実誤認等も主張したが、これらは適法な上告理由に当たらないとされた。
あてはめ
最高裁は、過去の膨大な大法廷判決・小法廷判決の趣旨を引用し、本件の事実関係下では憲法違反といえないと判断した。これは、検察官の起訴裁量権が広く認められている中で、本件の捜査・起訴が不当な差別に当たる、あるいは法定の手続を著しく踏みにじるものであるといった例外的な事由が認められないことを指している。
結論
被告人に対する本件捜査および公訴の提起は憲法14条、31条に違反せず、上告は棄却される。
実務上の射程
「公訴権濫用論」における、憲法違反の主張を否定する際のスタンダードな判例の一つとして位置づけられる。実務上は、検察官の裁量を争う際に「特段の事情」の有無を検討する上での否定的先例として機能する。答案上は、起訴の不当性を主張する設問において、原則として検察官の広い裁量を認める根拠として引用できる。
事件番号: 昭和56(あ)690 / 裁判年月日: 昭和56年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による公訴提起等の処分が、被告人の思想、信条、社会的身分又は門地などを理由になされた事実は認められず、憲法14条及び31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が公訴提起等について上告し、自身の思想や信条、社会的身分等を理由に、他の一般的な事案と比較して不当に不利益な取扱いを受けたと主張し…