いわゆる西条の暴力団員轢殺事件
判旨
共犯者の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には含まれないため、共犯者の供述のみに基づいて被告人の有罪を認定することは憲法上許容される。
問題の所在(論点)
憲法38条3項が規定する補強証拠の要否について、共犯者の供述が「本人の自白」に含まれるか、またはそれに準ずるものとして補強証拠を要するか。
規範
憲法38条3項が規定する「自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合」の「本人の自白」には、共犯者の供述は含まれない。また、これを本人自身の自白と同視したり、準ずるものとして扱う必要もない(昭和33年5月28日大法廷判決参照)。
重要事実
被告人が第1審判決において有罪と認定された際、共犯者Aの供述が証拠として用いられた。弁護人は、共犯者の供述のみによって共謀の事実を認定することは憲法38条3項に違反する旨を主張して上告した。なお、本件の第1審判決は、共犯者Aの供述以外にも複数の証拠を挙示して事実認定を行っていた。
あてはめ
最高裁判所大法廷の先例によれば、共犯者の供述は「本人の自白」とは別個の証拠能力を有する独立した証拠である。したがって、被告人自身の自白がない場合であっても、共犯者の供述があれば、それだけで有罪認定の基礎とすることが可能である。本件においても、共犯者Aの供述を証拠として共謀事実を認定したことは、憲法38条3項に違反するものではない。さらに、第1審は共犯者の供述のみに依拠したわけでもないため、違憲の主張は前提を欠く。
結論
共犯者の供述は憲法38条3項の「本人の自白」には当たらない。したがって、被告人自身の自白について補強証拠を要する場面ではなく、共犯者の供述により有罪を認定した原判決に憲法違反はない。
実務上の射程
司法試験では、補強法則(刑訴法319条2項)の範囲が問題となる場面で、共犯者の供述に補強証拠が必要かを論じる際に本判例の趣旨を引用する。結論として「不要」とする立場が通説・判例であるが、共犯者の供述の信用性が低いという実務上の懸念から、反対説の論理(反対尋問権の制約等)も意識した慎重な評価が求められることがある。
事件番号: 昭和28(あ)521 / 裁判年月日: 昭和29年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項の「本人の自白」には共同被告人の自白は含まれず、他の客観的証拠が存在する場合には、共同被告人の自白のみに基づいて有罪を認定したことにはならない。 第1 事案の概要:被告人が犯罪事実の認定に関し、第一審判決が共同被告人の自白を唯一の証拠として有罪を認定したものであると主張し、憲法38条…
事件番号: 昭和48(あ)1322 / 裁判年月日: 昭和48年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の自白(供述調書)を唯一の証拠として被告人を有罪とすることは、憲法38条3項が禁止する「自己に不利益な唯一の証拠」による有罪判決には当たらない。また、本件では共犯者の供述調書以外にも証拠が存在するため、自白の補強証拠に関する憲法違反の主張は前提を欠く。 第1 事案の概要:被告人が有罪判決を受…
事件番号: 昭和49(あ)2054 / 裁判年月日: 昭和49年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項が定める補強証拠の要否について、第一審判決が被告人の自白のみに基づいて有罪を認定したものではないことが判文上明らかである場合には、同条項違反の主張は前提を欠く。 第1 事案の概要:被告人が起訴された事実について、弁護人は第一審が被告人の自白のみに基づいて有罪を認定したと主張し、憲法3…