いわゆる愛知の女子高生殺し事件
判旨
被告人の自白に任意性を疑わせる証跡が認められない場合、当該自白を証拠として犯罪事実を認定した原判決の判断は正当であり、刑訴法411条を適用すべき事由は認められない。
問題の所在(論点)
被告人が強姦、殺人等の犯人であると認定された基礎となる自白について、刑訴法319条1項(自白法則)に照らし、任意性に疑いがあるとして証拠能力が否定されるべきか、またそれにより原判決を破棄すべき事由(刑訴法411条)があるか。
規範
自白の証拠能力について、憲法38条2項及び刑訴法319条1項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑いのある自白の証拠採用を禁じている。裁判所は、諸般の事情に照らし、自白の任意性を疑わせる具体的証跡の有無を検討し、証拠能力の有無を判断すべきである。
重要事実
被告人は強姦、殺人、死体損壊・遺棄の罪で起訴された。弁護側は事実誤認等を理由に上告したが、特に被告人の自白の任意性について争われた事案である。原判決は、被告人の自白に基づき犯人性を認定していた。本決定において、最高裁判所は職権で記録を調査し、自白の任意性を疑わせる事情の有無を確認した。
あてはめ
記録を調査した結果、被告人の自白が強制や不当な拘束下で得られたなどの、任意性を疑わせる証跡は認められない。したがって、自白の証拠能力は肯定される。また、当該自白を証拠として、被告人を強姦、殺人、死体損壊・遺棄の犯人と認定した原判決の事実認定に不合理な点はなく、正当なものとして是認できる。それゆえ、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべき事情は存在しないといえる。
結論
事件番号: 昭和27(あ)5163 / 裁判年月日: 昭和29年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】任意性に疑いのある自白は証拠能力を欠くが、被告人及び弁護人が同意し、かつ記録上任意にされたものでないと疑うべき理由がない場合には、証拠とすることができる。 第1 事案の概要:被告人が司法警察員に対して行った各供述(自白調書及び上申書)について、弁護人は取調官による暴行、強制、誘導に基づいたものであ…
被告人の自白に任意性を疑わせる証跡はなく、犯人性の認定は正当であるため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
自白法則に関する最高裁の基本姿勢を示す事例である。答案上では、自白の任意性が争点となる際、刑訴法319条1項の解釈として「任意性に疑いがあるといえる具体的証跡」の有無を確認し、証拠能力を判断する際の手順として用いる。本件は事実認定の正当性を確認した簡潔な決定であるが、実務上、自白の証拠能力肯定に向けた判断枠組みを支える一例となる。
事件番号: 昭和48(あ)2723 / 裁判年月日: 昭和49年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】偽計を用いて得られた自白の任意性については、捜査の経過等に照らし、その取調べ方法が不当なものといえない限り、直ちに否定されるものではない。 第1 事案の概要:被告人は殺意を否認していたが、警察官は、被害者の身体の傷口が一か所であることを知りながら、切り口が二か所ある被害者の着衣を被告人に提示して質…