一、 弁護人との接見交通権の制限を含めて検討しても自白の任意性に疑いがないとされた事例 二、 迅速裁判保護条項違反の主張が欠前提とされた事例
憲法34条,憲法38条,憲法37条1項,刑訴法39条
判旨
検察官が取調中を理由に弁護人の接見を一時的に拒んだとしても、直前に別の弁護人と接見し、かつ前日までにも頻繁に弁護人らと接見していた等の事情があれば、当該自白の任意性は否定されない。
問題の所在(論点)
検察官による接見交通の制限(接見指定等)がなされた状況下で得られた自白について、刑訴法319条1項の任意性が認められるか。
規範
接見交通権(刑訴法39条1項)の制限があった場合でも、直前の接見状況や過去の接見頻度、自白に至る経緯等の諸事情を総合考慮し、被疑者の防御権が実質的に侵害されたといえない限り、当該状況下でなされた自白の任意性は否定されない。
重要事実
被告人Bは、詐欺及び恐喝被疑事件で勾留中、余罪である贈収賄の取調べを受けていた。昭和41年12月2日午後4時30分頃、関谷弁護人が接見を求めたが、検察官は取調中を理由にこれを拒否した。しかし、Bは同日午後4時25分から45分まで別の弁護士(下山田弁護士)と接見した直後に自白を開始していた。また、同日以前の3日間にも、相前後して計4名の弁護人と接見を繰り返しており、関谷弁護人自身も前日に接見済みであった。その後、同日午後8時58分からは関谷弁護士との接見も行われた。
あてはめ
本件では、関谷弁護人の接見希望時、被告人は既に下山田弁護人と接見を終えた直後であり、精神的孤立から解放された状態にあったといえる。また、連日にわたり複数の弁護人と接見を重ねており、防御権の行使に実質的な支障が生じていたとは認めがたい。このような状況下での自白は、一時的な接見拒否があったとしても、不当な心理的圧迫によるものとは評価できず、自白の任意性に疑いはないと解される。
結論
接見交通権の制限を含めて検討しても、被告人の自白の任意性は肯定され、証拠能力が認められる。
実務上の射程
接見交通権侵害と自白の任意性に関する判断枠組み。接見制限が直ちに自白の証拠能力を否定するのではなく、接見の頻度や直近の接見有無といった具体的な防御権の行使状況に照らして、任意性に影響を及ぼす実質的な侵害があったかを判断する際の基準となる。
事件番号: 昭和27(あ)4491 / 裁判年月日: 昭和29年1月26日 / 結論: 棄却
論旨は被告人が当時病状にあつたことを主張し、記録上その事実は認められないことはないが、そうだとしても、単にそれだけのことで前記警察における供述が強制、拷問、又は脅迫によるものと即断することはできない。