憲法三七条三項違反の主張が「欠前提」とされた事例
憲法37条3項,刑訴法289条1項
判旨
必要的弁護事件において、弁論終結後の判決宣告中に被告人が私選弁護人を解任した場合であっても、弁護人なしに判決の宣告を継続することは刑訴法289条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
刑訴法289条1項は、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役・禁錮に当たる事件において弁護人の出席を求めているが、弁論終結後の判決宣告中に弁護人が不在となった場合に、そのまま宣告を続行することが同条項に違反するか。
規範
刑訴法289条1項が弁護人の出席を必要的開廷要件とする趣旨は、公判審理における被告人の防御権を確保することにある。したがって、審理(弁論)が既に終結し、判決を宣告する段階においては、特段の事情がない限り、弁護人の欠席は同条項に抵触せず、訴訟手続の違法を構成しない。
重要事実
必要的弁護事件の第一審において、弁論が終結した後の判決宣告の途中、被告人が突如として私選弁護人を解任する旨の発言を行った。裁判長は、新たな弁護人の選任を待つ等の措置を講じることなく、そのまま判決宣告を続行し、これを終了した。
あてはめ
本件は弁論が既に終結し、あとは判決を宣告するのみの状態であった。判決の宣告は裁判所の判断を外部に公表する手続であり、被告人の防御権行使が必要とされる審理段階ではない。被告人による突如とした解任という不測の事態においても、判決宣告の継続は適法な手続の範囲内であり、防御権の実質的な侵害は認められない。したがって、弁護人の不存在は宣告の有効性に影響を及ぼさない。
結論
本件第一審の訴訟手続に刑訴法289条1項の違反はなく、憲法37条3項にも反しない。上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は必要的弁護事件の開廷要件が「判決宣告」段階では緩和されることを示している。答案上は、289条1項の趣旨を防御権確保にあると定義した上で、判決宣告段階ではその必要性が乏しいことを論じる際に引用する。また、被告人による訴訟遅延目的の解任等、権利の濫用が疑われる場面での類推適用も検討し得る。
事件番号: 平成5(あ)946 / 裁判年月日: 平成7年3月27日 / 結論: 棄却
いわゆる必要的弁護事件において、裁判所が公判期日への弁護人出頭確保のための方策を尽くしたにもかかわらず、被告人において弁護人在廷の公判審理ができない事態を生じさせるなど判示の事実関係の下においては、当該公判期日については、刑訴法二八九条一項の適用がなく、弁護人の立会いのないまま公判審理を行うことができる。