いわゆる必要的弁護事件において、裁判所が公判期日への弁護人出頭確保のための方策を尽くしたにもかかわらず、被告人において弁護人在廷の公判審理ができない事態を生じさせるなど判示の事実関係の下においては、当該公判期日については、刑訴法二八九条一項の適用がなく、弁護人の立会いのないまま公判審理を行うことができる。
いわゆる必要的弁護事件の公判期日について刑訴法二八九条一項の適用がないとされた事例
刑訴法289条1項
判旨
被告人が弁護人の出頭を妨げるなどして、弁護人が在廷した状態での公判審理が不可能な事態を生じさせ、その解消が極めて困難な場合には、刑訴法289条1項の適用は排除される。
問題の所在(論点)
被告人が暴力や脅迫等を用いて弁護人の出頭を組織的に妨害し、公判の進行を阻止している特段の事情がある場合に、刑訴法289条1項に反して弁護人抜きで公判を進行させることが許されるか。
規範
刑訴法289条1項の必要的弁護制度は、被告人の防御の利益の擁護、適正な公判審理、国家刑罰権の公正な行使を目的とする。しかし、裁判所が弁護人の出頭確保のための方策を尽くしたにもかかわらず、被告人が弁護人の出頭を妨げるなどして弁護人在廷下での公判審理ができない事態を生じさせ、かつ、その解消が極めて困難な場合には、被告人は同制度による保護を受け得ず、当該期日に同項の適用はない。
重要事実
必要的弁護事件において、被告人は約15年にわたり忌避申立てや出廷拒否を繰り返した。国選弁護人に対しては、自宅に押し掛け「法廷に出るな」と強要し、弁護人の家族に対しても「家族の両手がそのままあると思うな」等と脅迫した。これにより、弁護士会が推薦した国選弁護人も不安を感じて欠席し、私選弁護人も被告人と通謀して在廷命令を無視し退廷した。裁判所は電話等で再三出頭を要請したが、弁護人の不出頭が続いたため、弁護人抜きで審理・判決を行った。
あてはめ
裁判所は弁護士会への処置請求や電話等による出頭要請など、弁護人確保の方策を尽くしている。これに対し、被告人は弁護人本人や家族への脅迫という反社会的な手段で出頭を阻止しており、弁護人が在廷した状態での審理は事実上不可能であった。このような事態は同法が本来想定しないものであり、被告人に防御の利益を享受させる余地はなく、実効ある弁護活動も期待できない。したがって、同項の適用を認めない事態に至っていると解される。
結論
弁護人抜きでの審理・判決は、刑訴法289条1項に違反せず、適法である。
実務上の射程
極めて例外的な事案に限定される射程であるが、被告人の権利濫用が著しく、司法制度を破綻させる意図が明らかな場合の「例外の法理」として、答案上は手続的正義の限界を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和41(あ)617 / 裁判年月日: 昭和42年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項の刑事免責は、労働組合の正当な行為についてのみ認められるものであり、暴力の行使に及ぶ行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱するため、刑事免責の規定は適用されない。 第1 事案の概要:被告人は、労働組合活動の一環として本件行為に及んだが、その態様は暴力の行使を伴うものであった。第一審お…
事件番号: 昭和24(れ)590 / 裁判年月日: 昭和24年9月17日 / 結論: 破棄差戻
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