判決の宣告のみをする場合であつても公判手続の更新をしないことは憲法三一条に違反する旨の主張を欠前提で処理した事例
憲法31条,刑訴法315条
判旨
内容が確定して内部的に成立した判決について、実体審理に関与していない裁判官がその宣告のみを行うことは、口頭主義・直接主義に反せず、憲法31条にも違反しない。
問題の所在(論点)
実体審理に関与していない裁判官が判決の宣告を行うことは、刑訴法315条が要請する直接主義、および憲法31条の適正手続に違反するか。
規範
刑訴法315条但書の趣旨に鑑み、判決の内容が合議体によって確定し内部的に成立している場合には、その形式的な宣告手続を実体審理に関与しない裁判官が行うことは、直接主義および口頭主義の要請に反するものではない。
重要事実
被告人の事件について、判決の内容は既に確定し内部的に成立していたが、その判決の宣告のみを、実体審理に直接関与していない裁判官が行った。弁護人は、これが直接主義に反し憲法31条に違反するとして上告した。
あてはめ
本件では、判決の内容は審理に関与した裁判官らによって確定され、内部的に成立している。宣告は成立した判決を外部に公表する形式的な行為にすぎない。したがって、刑訴法315条但書が許容するように、宣告のみを別の裁判官が行っても、被告人の防御権や直接主義の根幹を害するものとはいえない。
結論
実体審理に関与しない裁判官による判決の宣告は適法であり、憲法31条にも違反しない。
実務上の射程
刑事訴訟法315条(裁判官の更迭)に関連する直接主義の例外を画する判例である。判決の「成立」と「宣告」を峻別し、実体的な判断プロセスに審理関与裁判官が関わっている限り、形式的な宣告のみを行う裁判官が異なっても違憲・違法ではないことを示す際に引用する。
事件番号: 昭和53(あ)2067 / 裁判年月日: 昭和54年9月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審裁判官が予断を抱いていたとの事実は認められず、憲法31条および37条1項に違反しない。また、原審が判断を示していない事項や事案を異にする判例の引用は、上告理由としての判例違反に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、第一審裁判官が本件について予断を抱いたまま審理を進めたこと、および審理を尽…