判例違反の主張が限判決の所論判示部分は所論の趣旨を含むものではないとして「欠前提」とされた事例
刑訴法405条2号
判旨
詐欺罪における欺罔行為とは、交付の判断の基礎となる重要な事項について虚偽の事実を告知することをいい、真実の用途を告知されていれば被害者が交付に応じなかったといえる場合には、詐欺罪が成立する。
問題の所在(論点)
物の借用時において、真実の用途を隠して借用を申し込む行為が、詐欺罪の「欺罔」にあたるか。特に、用途の偽りが交付の判断を左右する場合の成否が問題となる。
規範
詐欺罪(刑法246条1項)の「欺罔」とは、財物の交付の判断の基礎となる重要な事項について、人を錯誤に陥らせる行為をいう。交付の目的や使途が、その属性上、相手方が交付するか否かを決定する上で重要な意味を持つ場合、これを偽ることは欺罔行為に該当する。
重要事実
被告人は、絵画を借り受けるにあたって、その真実の用途(転売や担保提供等、本来の借用目的とは異なる使途)を秘して被害者に借用を申し込んだ。被害者は被告人の告知した用途を信じて絵画を交付したが、実際には真実の用途を知っていれば貸与に応じることはなかったという状況であった。
あてはめ
本件において、被告人は真実の用途を告知せずに絵画の借用を申し込んでいる。被害者がもし真実の用途を告知されていたのであれば、絵画の借用申し込みに応じなかったものと認められる。そうであれば、用途の告知は被害者にとって交付の可否を決する「重要な事項」であったといえる。したがって、これについて虚偽の事実を伝え、または真実を秘して申し込む行為は、被害者を錯誤に陥らせる欺罔行為にあたると評価される。
結論
真実の用途を告知されていれば被害者が交付に応じなかったといえる場合には、用途を偽って財物を借り受ける行為に詐欺罪が成立する。
実務上の射程
本決定は、使途を偽った詐欺(使途詐欺)の成立要件として、当該使途が交付の判断にとって「重要」であることを求めている。答案上では、被害者が真実を知っていれば交付しなかったであろうという「交付の基礎となる重要事項」であることを、具体的事実から認定する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)1640 / 裁判年月日: 昭和27年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽の書面を作成・行使して他人を欺罔し財物を交付させた場合、たとえ私文書偽造・同行使罪の成立が否定されたとしても、詐欺罪(刑法246条)が成立することに妨げはない。 第1 事案の概要:被告人は、虚偽の内容を含む書面を作成し、これを用いて相手方を欺き、金員等の交付を受けたとされる事案。第一審判決は私…
事件番号: 昭和37(あ)2579 / 裁判年月日: 昭和40年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の権利が含まれる可能性を認識しながら、対象物全体が自己の権利に属すると装って相手方を欺き、財物を交付させた場合には詐欺罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人Bは、本件組合が所有する山林(実測約43町歩)との交換により国有林を騙取しようと考えたが、交換対象として提示した山林(実測約64町歩)の…
事件番号: 昭和27(あ)6498 / 裁判年月日: 昭和28年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪における欺罔行為は、必ずしも被害者に経済的損失を負わせることのみを目的とするものではなく、被害者が真実を知っていれば金品を交付しなかったであろう重要な事項について偽ることを含む。 第1 事案の概要:被告人らは共謀の上、特定の商品や権利の販売において、その性質や価値について虚偽の事実を告げた。…