判例違反の主張が欠前提とされた事例
判旨
いわゆる囮捜査の適法性については、捜査手続に重大な違法があるか否かによって判断されるべきであるが、原判決が囮捜査の事実を否定し、証拠収集手続に重大な違法がないと判断したことは正当である。
問題の所在(論点)
捜査機関がいわゆる囮捜査の手法を用いた場合、その捜査手続は適法か。また、捜査に違法がある場合に、憲法13条や31条違反(適正手続の保障)を構成するほどの「重大な違法」が認められるかが問題となる。
規範
捜査手続における違法性の有無は、憲法13条、31条の趣旨に照らし、当該捜査が「重大な違法」を伴うものであるか否かにより判断される。特に対象者の犯意を誘発するような囮捜査については、その態様や必要性を総合考慮し、適法性の限界を画すべきである。
重要事実
被告人側は、本件がいわゆる囮捜査にあたり、その捜査手続が憲法13条や31条に違反する重大な違法があるとして、違法収集証拠排除法則等の観点から上告した。しかし、原判決は本件が囮捜査であることを認めず、証拠収集手続に重大な違法があるとも認めていなかった。
あてはめ
本件において原判決は、事実関係としてそもそも本件を囮捜査の事案であるとは認定していない。また、証拠の収集手続に関しても「重大な違法」があるとは認められないと判示している。最高裁は、これらの原審の事実認定を前提とする限り、弁護人が主張する憲法違反や判例違反の主張は前提を欠くものであると判断した。
結論
本件捜査手続に憲法13条、31条に違反するような重大な違法は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
囮捜査の適法性に関するリーディングケースとして参照される。答案上では、捜査の必要性と相当性の観点から「犯意誘発型」か「機会提供型」かを区別し、前者であれば原則違法、後者であれば相当性を欠かない限り適法とする判断枠組みを導く際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和29(あ)2559 / 裁判年月日: 昭和36年8月1日 / 結論: 棄却
論旨は、原判決の憲法一三条違反を主張するけれども、実質は、囮捜査によつて誘発された麻薬の所持を有罪としたことを避難するに帰する。しかし「他人の誘発により犯意を生じ又はこれを強化された者が犯罪を実行した場合に、わが刑事法上その誘惑者が場合によつては教唆犯又は従犯として責を負うことのあるのは格別、その他人である誘惑者が一私…