裁判の執行に関する異議の手続の審理及び裁判と憲法32条、82条
憲法32条,憲法82条,刑訴法502条,刑訴法504条
判旨
裁判の執行に関する異議の手続は、憲法82条が公開を要求する「裁判の対審及び判決」には当たらない。したがって、同手続を書面審理により行うことは憲法32条及び82条に違反しない。
問題の所在(論点)
裁判の執行に関する異議の手続の審理及び裁判が、憲法82条1項にいう「裁判の対審及び判決」に該当し、公開を必要とするか。また、同手続を書面審理で行うことが憲法32条・82条に違反するか。
規範
憲法82条1項が対審及び判決の公開を原則とするのは、裁判の公正を確保し国民の信頼を維持するためであるが、すべての裁判手続にこれを要求するものではない。純然たる訴訟事件以外の裁判手続については、特段の事情がない限り、書面審理によることが許容される。
重要事実
本件は、刑事裁判の執行に関する異議の手続(刑訴法502条等)について、その審理及び裁判が公開の法廷で行われず書面審理によってなされたことに対し、抗告人が憲法32条(裁判を受ける権利)及び82条(裁判の公開)に違反すると主張して特別抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
裁判の執行に関する異議の手続は、既に確定した刑の執行という公法上の執行処分の当否を審査するものであり、実体的な権利義務関係を確定させる「対審」そのものではない。判例(最大決昭42.7.5)の趣旨に照らせば、このような手続は憲法82条が直接予定する「裁判の対審及び判決」には当たらないと解される。したがって、口頭弁論を経ず書面審理によって裁判を行うことは、適正な手続の範囲内であり、憲法32条が保障する裁判を受ける権利を侵害するものではない。
事件番号: 昭和58(し)112 / 裁判年月日: 昭和58年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判の執行に関する異議(刑訴法502条)において、執行の基礎となる裁判自体の内容の不当を申し立てることは許されない。 第1 事案の概要:抗告人は、確定した裁判の執行に関して異議を申し立てた。その際、異議の理由として、裁判の内容そのものが憲法31条に違反するなどの不当性があることを主張した。 第2 …
結論
裁判の執行に関する異議の手続を書面審理で行うことは、憲法32条及び82条に違反しない。
実務上の射程
本判決は、公開原則の対象となる「裁判の対審及び判決」の範囲を限定的に解する実務を維持したものである。司法試験においては、非訟事件、家事事件、民事執行・保全手続、あるいは刑事の執行・保護処分に関する手続において、公開原則の要否が論点となった際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和42(ク)358 / 裁判年月日: 昭和42年12月22日 / 結論: 棄却
競売開始決定に対する異議手続は競売手続を進行させるか否かを決定するものに外ならず、抵当権の存否それ自体について既判力を生ずるものではないから、公開法廷において審理しなくても、憲法第三二条、第八二条に反しない。
事件番号: 昭和36(し)36 / 裁判年月日: 昭和36年8月28日 / 結論: 棄却
一 検察官が裁判の執行指揮その他の処分をする以前になされた裁判の執行に関する異議の申立は不適法である。 二 裁判の執行に関する異議において、裁判の内容そのものの不当を主張し、あるいは現行刑罰制度ないし行刑制度を非難することは許されない。
事件番号: 昭和42(し)36 / 裁判年月日: 昭和42年8月1日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をしても憲法第三七条第一項に違反しないことは、昭和四〇年(し)第九八号同四二年七月五日大法廷決定の趣旨に照らし明らかである。
事件番号: 昭和29(し)5 / 裁判年月日: 昭和29年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下において高等裁判所がなした決定に対しては、訴訟法上特に最高裁判所の権限に属すると定められた抗告のみが許され、同法564条後段に基づく最高裁判所への即時抗告は認められない。 第1 事案の概要:本件は、旧刑事訴訟法564条前段に基づき高等裁判所がなした決定に対し、抗告人が同条後段を根拠と…