法人税法159条1項の規定があいまいであるとして憲法31条違反をいう主張が前提を欠くとされた事例
憲法31条,法人税159条1項
判旨
法人税法159条1項に規定される脱税罪の構成要件である「偽りその他不正の行為」という文言は、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に違反するほど曖昧なものではない。
問題の所在(論点)
法人税法159条1項の脱税罪の構成要件である「偽りその他不正の行為」という文言は、憲法31条(明確性の原則)に違反するか。
規範
刑罰法規の明確性は、憲法31条の適正手続の要請から導かれる。もっとも、文言が多義的であっても、通常の判断能力を有する一般人の理解において、何が禁止され、何が許容されるかが基準として読み取れるのであれば、明確性の原則に反しない。
重要事実
被告人合資会社A、被告人B及び被告人Cが、法人税法違反(脱税)の罪に問われた事案である。被告人側は、同法159条1項(現在の159条1項に相当)に規定される「偽りその他不正の行為」という要件が不明確であり、罪刑法定主義(憲法31条)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、「偽りその他不正の行為」との文言が曖昧であるとはいえないと判断した。これは、先行する裁判例の蓄積や社会通念に照らせば、同文言が「税の賦課徴収を不能または著しく困難にするような欺罔その他の工作」を指すことが明らかであり、一般人にとっても予測可能であるためと解される(判決文からは詳細な検討過程は不明)。
事件番号: 昭和60(あ)1528 / 裁判年月日: 昭和63年9月2日 / 結論: 棄却
所得秘匿工作をしたうえ逋脱の意思で会社臨時特別税確定申告書を税務署長に提出しなかつた場合、会社臨時特別税法二二条一項にいう「偽りその他不正の行為」に当たるのは、所得秘匿工作を伴う不申告の行為であり、また、その判示に当たつては、右の行為があつたことを摘示すれば足り、所得秘匿工作の具体的な日時、場所、方法などについては摘示…
結論
法人税法159条1項にいう「偽りその他不正の行為」との文言は憲法31条に違反しない。
実務上の射程
脱税罪(法人税法・所得税法等)の合憲性や解釈が争点となる問題において、明確性の原則への適合性を補強する根拠として活用できる。答案上は、本判例を引用しつつ、具体的にどのような隠蔽・装飾行為が「不正の行為」に該当するかを事実関係からあてはめることが求められる。
事件番号: 昭和57(あ)363 / 裁判年月日: 昭和58年3月11日 / 結論: 棄却
法人の代表者ではない実質的な経営者も、法人税法一五九条一項、一六四条一項にいう「その他の従業者」にあたる。