所得秘匿工作をしたうえ逋脱の意思で会社臨時特別税確定申告書を税務署長に提出しなかつた場合、会社臨時特別税法二二条一項にいう「偽りその他不正の行為」に当たるのは、所得秘匿工作を伴う不申告の行為であり、また、その判示に当たつては、右の行為があつたことを摘示すれば足り、所得秘匿工作の具体的な日時、場所、方法などについては摘示することを要しない。
所得秘匿工作をしたうえ逋脱の意思で会社臨時特別税確定申告書を税務署長に提出しなかつた場合における会社臨時特別税法二二条一項にいう「偽りその他不正の行為」とその判示方法
会社臨時特別税法22条1項,会社臨時特別税法27条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項
判旨
法人税法等の脱税罪における「偽りその他不正の行為」について、所得を秘匿し過少な確定申告書を提出する行為、または所得秘匿工作を伴い申告書を提出しない行為はこれに該当する。
問題の所在(論点)
法人税法および会社臨時特別税法における逋脱(ほだつ)犯の成立要件である「偽りその他不正の行為」の意義、および裁判決における実行行為の適法な判示の程度が問題となった。
規範
1. 真実の所得を秘匿し、所得金額をことさらに過少に記載した確定申告書を提出する行為は、それ自体が「偽りその他不正の行為」にあたる。 2. 所得秘匿工作を伴う不申告行為も「偽りその他不正の行為」にあたる。この場合、実行行為の判示としては所得秘匿工作を伴う不申告があったことを示せば足り、工作の具体的な日時・場所・方法までを判示する必要はない。
重要事実
被告人は、公表経理上において架空の売上原価を計上するなどの手法により真実の所得を隠蔽した。その上で、法人税については所得金額を過少に記載した確定申告書を税務署長に提出し、会社臨時特別税については申告期限までに確定申告書を提出しなかった。
あてはめ
1. 法人税について:真実の所得を秘匿した上で内容虚偽の確定申告書を提出した事実は、申告納税制度の根幹を害する詐術的行為であり、「偽りその他不正の行為」として実行行為の認定に欠けるところはない。 2. 会社臨時特別税について:架空原価の計上という所得秘匿工作を伴い、逋脱の意思で不申告に至った事実は、単なる不申告を超えた不正手段による租税回避といえる。判示において工作の具体的事項(日時・場所等)が特定されていなくとも、秘匿工作を伴う不申告の事実が示されていれば実行行為の認定として十分である。
結論
被告人の行為は、いずれも「偽りその他不正の行為」に該当し、逋脱犯が成立する。第一審判決の実行行為に関する判示は正当である。
実務上の射程
脱税の実行行為の認定手法に関する重要判例。積極的な虚偽申告だけでなく、所得秘匿工作を伴う不申告(消極的態様)も同罪を構成することを明確にしている。答案上は、単なる申告漏れと、工作を伴う「偽りその他不正の行為」を区別する際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和57(あ)336 / 裁判年月日: 昭和57年9月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】脱税事件における所得金額の認定において、証拠から合理的に推認される計算方法を用いることは経験則に合致し、合理的である。 第1 事案の概要:被告人が所得税法違反(脱税)に問われた事案において、原審(控訴審)は一定の認定方法を用いて被告人の所得金額を算出した。これに対し弁護人は、当該認定方法が不合理で…