法人の代表者ではない実質的な経営者も、法人税法一五九条一項、一六四条一項にいう「その他の従業者」にあたる。
法人の代表者ではない実質的な経営者と法人税法一五九条一項、一六四条一項にいう「その他の従業者」
法人税法159条1項,法人税法164条1項
判旨
法人税法における脱税等の罰則規定の適用対象である「その他の従業者」には、法人の代表者以外の者であっても、実質的な経営者として法人の業務に従事する者が含まれる。
問題の所在(論点)
法人税法上の脱税犯等の主体、および両罰規定の適用対象となる「その他の従業者」の範囲に、代表者ではない実質的経営者が含まれるか。
規範
法人税法159条1項(現在の159条1項)および164条1項(現在の163条等)に規定される「その他の従業者」とは、形式的な役職名にとらわれず、当該法人の業務に従事する者のうち、代表者以外の者を広く含む。したがって、代表権を有しない者であっても、実質的な経営権を行使して法人の業務を遂行している者はこれに該当する。
重要事実
被告人が、法人の代表者ではないものの、実質的な経営者として法人の運営に関与し、法人税の免脱等の行為を行った事案。被告人が「その他の従業者」に該当するかが争点となった。
事件番号: 平成19(あ)2014 / 裁判年月日: 平成23年1月26日 / 結論: 棄却
1 会社の代表取締役から実質的に経理担当の取締役に相当する権限を与えられ,会社の決算・確定申告の業務等を統括していた者は,会社から報酬を受けることも日常的に出社することもなかったとしても,法人税法(平成19年法律第6号による改正前のもの)164条1項にいう「その他の従業者」に当たる。 2 法人税ほ脱犯において,行為者が…
あてはめ
本件において、被告人は法人の代表者の地位にはなかったが、実質的に法人の経営を担っていた。法人税法が「その他の従業者」を処罰や両罰規定の対象としている趣旨は、法人の業務を実効的に遂行する者による不正行為を抑止することにある。そうであるならば、形式的な肩書きの有無にかかわらず、実質的に経営を支配・執行している者は「従業者」としての実質を備えているといえる。ゆえに、被告人を「その他の従業者」と認めた原判断は妥当である。
結論
代表者ではない実質的経営者は、法人税法にいう「その他の従業者」に含まれる。
実務上の射程
経済刑法における主体性の解釈として重要。形式的な役職(取締役等)の有無にかかわらず、実質的な経営実態に基づいて実行行為者性や両罰規定の適用を認める際の論拠となる。答案では、処罰の必要性と文言の合理的な解釈(実質的解釈)を組み合わせて展開する際に利用する。
事件番号: 平成8(あ)963 / 裁判年月日: 平成9年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人税法159条1項に規定される脱税罪の構成要件である「偽りその他不正の行為」という文言は、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に違反するほど曖昧なものではない。 第1 事案の概要:被告人合資会社A、被告人B及び被告人Cが、法人税法違反(脱税)の罪に問われた事案である。被告人側は、同法159…
事件番号: 昭和60(あ)1528 / 裁判年月日: 昭和63年9月2日 / 結論: 棄却
所得秘匿工作をしたうえ逋脱の意思で会社臨時特別税確定申告書を税務署長に提出しなかつた場合、会社臨時特別税法二二条一項にいう「偽りその他不正の行為」に当たるのは、所得秘匿工作を伴う不申告の行為であり、また、その判示に当たつては、右の行為があつたことを摘示すれば足り、所得秘匿工作の具体的な日時、場所、方法などについては摘示…