酒気帯び運転の所為とその際の免許証不携帯の所為の罪数(観念的競合) 処断刑超過による非常上告
刑法54条1項,道交法65条1項,道交法119条1項7号の2,道交法95条1項,道交法121条1項10号,刑訴法458条1号
判旨
酒気帯び運転と運転免許証不携帯の罪は、一個の行為が数個の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にあり、重い方の法定刑の範囲内で処断すべきである。
問題の所在(論点)
酒気帯び運転と免許不携帯が観念的競合となる場合に、重い方の罪の法定刑(罰金5万円)を超えて罰金を科すことができるか。すなわち、処断刑の範囲を逸脱した判決の違法性が問題となる。
規範
一個の行為が数個の罪名に触れる場合(観念的競合)は、刑法54条1項前段及び10条に基づき、その最も重い刑により処断する。この際、処断刑の多額(上限)は、選択した刑のうち最も重い罪の法定刑の多額を超えることはできない。
重要事実
被告人は、酒気を帯びた状態で(呼気1リットルにつき0.25mg以上)、かつ運転免許証を携帯せずに普通貨物自動車を運転した。原略式命令は、酒気帯び運転罪(道路交通法119条1項7号の2:5万円以下の罰金等)と免許不携帯罪(同法121条1項10号:2万円以下の罰金等)を観念的競合としつつ、罰金7万円を科した。この命令は既に確定していたが、検事総長により非常上告がなされた。
あてはめ
本件における酒気帯び運転と免許不携帯は、いずれも「運転」という一個の行為によって同時に成立しているため、刑法54条1項前段の観念的競合にあたる。この場合、重い方の罪である酒気帯び運転罪の刑で処断すべきであり、罰金刑を選択したときはその上限は5万円となる。原略式命令がこれを上回る罰金7万円を科した事実は、処断刑の多額を逸脱しており、法令に違反し、かつ被告人に不利益なものであるといえる。
事件番号: 平成14(さ)1 / 裁判年月日: 平成14年9月26日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】1個の行為が数個の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)において、処断刑の多額は最も重い罪の法定刑によるべきであり、その範囲を超えて科された刑罰は法令違反として破棄される。 第1 事案の概要:被告人は、酒気を帯びた状態で運転免許証を携帯せずに自動車を運転した。原略式命令は、酒気帯び運転(法定…
結論
原略式命令を破棄する。重い方の法定刑の範囲内である罰金5万円に処する。
実務上の射程
罪数判断において、同一の運転行為から派生する道路交通法上の複数の違反(酒気帯び、無免許、不携帯等)が観念的競合となることを示す射程を持つ。答案上は、科刑上の一罪となる場合の処断刑の算定プロセス、特に「最も重い刑」の範囲内でなければならないという基本的原則を確認する際に有用である。
事件番号: 平成13(さ)3 / 裁判年月日: 平成14年4月16日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】1個の行為が複数の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)において、罰金刑を選択する場合の処断刑の上限は、各罪の法定刑のうち最も重いものの多額に制限される。 第1 事案の概要:被告人は、無免許かつ酒気を帯びた状態で普通乗用自動車を運転した。原略式命令は、無免許運転(道路交通法118条1項1号:…
事件番号: 平成8(さ)7 / 裁判年月日: 平成8年9月5日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】酒気帯び運転の罪に対し、法定刑の上限(5万円)を超える罰金(10万円)を科した略式命令は、法令に違反し、被告人に不利益であるため、非常上告により破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は酒気を帯びた状態で普通乗用自動車を運転した。簡易裁判所は、道路交通法65条1項、119条1項7号の二に基…
事件番号: 平成15(さ)3 / 裁判年月日: 平成15年10月9日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において、併合罪の処断刑の制限(刑法48条2項)を超えた罰金刑を科したことは、法令に違反し、かつ被告人のため不利益であるため、非常上告により破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人は、無免許運転、信号無視、及び免許証の不返納の3つの事実により略式命令を受けた。それぞれの法定刑(罰金)は、…
事件番号: 平成1(さ)3 / 裁判年月日: 平成元年10月17日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令において、加重事由がないにもかかわらず法定刑の上限を超える罰金に処したことは、法令に違反し、かつ被告人のため不利益な裁判であるから、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和62年11月5日、酒気を帯びた状態で普通貨物自動車を運転した。これに対し原略式命…