処断刑超過による非常上告
刑訴法458条1号
判旨
略式命令において、併合罪の処断刑の制限(刑法48条2項)を超えた罰金刑を科したことは、法令に違反し、かつ被告人のため不利益であるため、非常上告により破棄を免れない。
問題の所在(論点)
併合罪の処断刑の上限(各罪の法定刑の合計額)を超える罰金刑を科した確定略式命令が、刑事訴訟法458条1号の非常上告の対象となるか。
規範
併合罪(刑法45条前段)において罰金を科す際、その多額は各罪について定めた罰金の多額の合計以下に制限される(刑法48条2項)。この処断刑の上限を超える刑を科すことは、著しく法令に違反し、被告人に不利益を及ぼす事由に該当する。
重要事実
被告人は、無免許運転、信号無視、及び免許証の不返納の3つの事実により略式命令を受けた。それぞれの法定刑(罰金)は、改正前道路交通法の規定により10万円以下、5万円以下、2万円以下であった。これらを併合罪として処理した場合の処断刑の上限は17万円であったが、原略式命令は被告人に対し罰金21万9000円を科し、その命令は確定した。
あてはめ
本件における各罪の罰金刑の法定刑の上限は計17万円(10万+5万+2万)である。これに対し、原略式命令が科した罰金21万9000円は、刑法48条2項が定める併合罪の処断刑の上限を明らかに逸脱している。このように上限を超える刑を科したことは、実体法上の解釈・適用を誤ったものであり、「明らかに法令に違反しており、かつ、被告人のため不利益である」と評価される。
事件番号: 平成9(さ)2 / 裁判年月日: 平成9年4月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において法定刑の上限を超える罰金刑を科したことは、法令に違反し、かつ被告人に不利益な裁判であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は酒気帯び状態で普通乗用自動車を運転した。釧路簡易裁判所は、道路交通法違反(酒気帯び運転)の事実を認定し、被告人を罰金7万円に…
結論
原略式命令は法令違反により破棄される。被告人を改めて処断刑の範囲内である罰金10万円に処する。
実務上の射程
本判決は、非常上告手続(刑訴法454条〜)における「事件の裁判が法令に違反したとき」の典型例(処断刑の範囲の誤り)を示すものである。司法試験の実務基礎科目や刑訴法の設問において、確定判決の是正手段を問う際の論拠として使用できる。
事件番号: 平成16(さ)3 / 裁判年月日: 平成16年12月9日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において法定刑の限度を超えた罰金を科したことは、法令に違反し、かつ被告人の不利益になるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:1. 被告人は、普通仮運転免許を受けた者であるが、運転者席の横に有資格者を同乗させずに練習のため普通乗用自動車を運転した(道路交通法87条2…
事件番号: 昭和57(さ)1 / 裁判年月日: 昭和57年10月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令が、加重事由がないにもかかわらず法定刑の上限を超えた罰金刑を科していた場合、法令違反かつ被告人にとって不利益であるため、非常上告に基づき破棄される。 第1 事案の概要:被告人は酒気帯び運転の事実(道路交通法違反)により、松阪簡易裁判所から罰金4万円の略式命令を受け、これが確定した。…
事件番号: 平成8(さ)7 / 裁判年月日: 平成8年9月5日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】酒気帯び運転の罪に対し、法定刑の上限(5万円)を超える罰金(10万円)を科した略式命令は、法令に違反し、被告人に不利益であるため、非常上告により破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は酒気を帯びた状態で普通乗用自動車を運転した。簡易裁判所は、道路交通法65条1項、119条1項7号の二に基…
事件番号: 平成1(さ)3 / 裁判年月日: 平成元年10月17日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令において、加重事由がないにもかかわらず法定刑の上限を超える罰金に処したことは、法令に違反し、かつ被告人のため不利益な裁判であるから、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和62年11月5日、酒気を帯びた状態で普通貨物自動車を運転した。これに対し原略式命…