弁論要旨と控訴趣意書を援用する旨の上告趣意の適否
刑訴法407条
判旨
上告趣意書自体に上告趣意の内容が明示されておらず、単に第一審の弁論要旨や原審の控訴趣意書を引用・援用するにとどまる上告趣意の提出は、不適法なものとして棄却される。
問題の所在(論点)
上告趣意書において、具体的な主張内容を記載せず、第一審や控訴審で提出した他の書面を援用する形式の主張が、刑訴法上の適法な上告趣意の記載として認められるか。
規範
上告趣意書には、刑訴法が定める上告理由(憲法違反、判例違反等)を具体的に明示しなければならない。上告趣意書自体にその具体的な内容を記載せず、他の書面(第一審の弁論要旨や控訴趣意書等)を引用・援用するのみでは、適法な上告趣意の提出とは認められない。
重要事実
上告人の弁護人は、上告趣意書において、原判決に事実誤認がある旨を主張した。しかし、その具体的な内容は、第一審の弁論要旨および原審の控訴趣意書に記載のとおりであるとしてこれらを援用するにとどめ、上告趣意書自体には具体的な主張内容を明示していなかった。
あてはめ
本件において、弁護人は上告趣意書を作成しているものの、その実質的な内容は他の書面を「援用する」という記述に限定されている。これでは、上告趣意書自体によって上告理由を特定・明示しているとは評価できない。最高裁判所は、昭和25年の判例を踏襲し、このような形式的な記載は上告趣意の内容が明示されていないものと判断した。
事件番号: 昭和26(あ)38 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認や量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない。また、上告提起期間後に提出された弁護人の上告趣意書については、裁判所は判断を下す必要がない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、その趣意は事実誤認および量刑不当を主張するものであった。また、弁護人が提出した上告趣意書は…
結論
本件上告趣意の提出は不適法であり、刑訴法414条、386条1項2号により上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の上告趣意書の記載要件に関する極めて基本的な判断である。実務上、上告趣意書には当該審級における具体的な不服の理由を自叙する必要があり、他審級の書面を包括的に引用するのみでは、書面提出の法的義務を果たしたことにならない。答案作成上は、上告審の不適法却下事由を検討する際の基準として参照される。
事件番号: 昭和47(あ)2127 / 裁判年月日: 昭和49年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意書差出期間の延長を求める主張、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張はいずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告趣意書差出期間の延長を求め、弁護人が事実誤認、単なる法令違反、および量刑不当を理由として上告を申し立てた事案。 第2 問題の所在(論点):上…
事件番号: 昭和27(あ)5353 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意が憲法違反を主張するものであっても、その実質が単なる訴訟法違反や量刑不当の主張に帰する場合には、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人A及び被告人Bが、それぞれ弁護人を通じて最高裁判所に上告を申し立てた事案である。弁護人らは上告趣意において「憲法違反」を主張…