非行事実が認められないことを理由とする不処分決定と刑事補償
刑事補償法1条1項,少年法23条2項
判旨
非行事実が認められないことを理由に保護処分に付さない旨の決定を受けた者に対し、身体の自由の拘束による補償を行わなくても、憲法40条、29条3項、14条に違反しない。
問題の所在(論点)
少年法上の不処分決定を受けた者に対し、身体拘束に関する補償を定めた法律がないことが、憲法40条(刑事補償)、29条3項(財産権)、14条(平等権)に違反するか。
規範
憲法40条の刑事補償の規定は、刑事裁判手続において無罪の裁判を受けた者を対象とするものであり、少年法に基づく保護処分等の手続はこれに含まれない。また、適法な手続による拘束は、憲法29条3項の正当な補償を要する損失とはいえず、少年手続と刑事手続の性質の差異から生じる補償の有無の区別は、憲法14条の法の下の平等にも反しない。
重要事実
少年法に基づき身体の拘束(鑑別所収容等)を受けた少年に対し、家庭裁判所が非行事実が認められないことを理由として、同法23条2項に基づき保護処分に付さない旨の決定(不処分決定)を下した。これに対し、身体拘束を受けたことに対する補償がなされないことが憲法違反であるとして争われた。
あてはめ
最高裁は、先行する大法廷判例の趣旨を引用し、刑事手続と少年保護手続の性質の違いを前提としている。少年保護手続は少年の健全育成を目的とする後見的な手続であり、刑事罰を科す刑事手続とは本質を異にする。したがって、刑事補償(憲法40条)の対象にはならず、また適法な手続に基づく制約として憲法29条3項の対象外であり、刑事被告人と少年の取扱いの差異も合理的な区別として憲法14条に違反しないと解される。
事件番号: 平成1(し)123 / 裁判年月日: 平成3年3月29日 / 結論: 棄却
少年法二三条二項による不処分決定は、非行事実が認められないことを理由とするものであっても、刑事補償法一条一項にいう「無罪の裁判」には当たらない。
結論
保護処分に付さない旨の決定を受けた者に対し国が補償を行わなくても、憲法40条、29条3項、14条に違反しない。
実務上の射程
本判決により少年事件における刑事補償の不在は合憲とされたが、後に立法(少年補償法)によって実務上の手当てがなされた。答案上は、刑事補償の「無罪の裁判」の定義や、公権力行使に伴う損失補償の限界を論ずる際の比較対象として活用できる。
事件番号: 昭和58(し)124 / 裁判年月日: 昭和61年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不起訴となった別罪の逮捕・勾留期間を、無罪となった本罪の刑事補償の対象とするには、実質的に本罪の捜査に利用されたか、またはそれと同視すべき特別の事情があることを要する。両事件に関連性があるだけでは足りず、拘禁期間中に本罪の核心に迫る重要な裏付捜査が行われている必要がある。 第1 事案の概要:申立人…
事件番号: 昭和30(し)15 / 裁判年月日: 昭和31年12月24日 / 結論: 破棄差戻
憲法第四〇条にいう「抑留又は拘禁」中には、たとえ不起訴になつた事実に基く抑留または拘禁であつても、そのうちに実質上は、無罪となつた事実の取調のための抑留または拘禁であると認められるものがあるときは、その部分の抑留および拘禁もまたこれを包含するものと解するを相当とし、刑事補償法第一条第一項の「未決の抑留又は拘禁」とは右憲…
事件番号: 平成13(し)108 / 裁判年月日: 平成13年12月7日 / 結論: 棄却
少年の保護事件に係る補償に関する法律5条1項の決定に対する抗告は許されず,このように解しても憲法14条,32条に違反しない。
事件番号: 昭和49(し)69 / 裁判年月日: 昭和49年7月18日 / 結論: 棄却
在監者の上訴申立に関する刑訴法三六六条一項は、刑事補償請求事件の特別抗告申立には準用ないし類推適用されない。