少年法二三条二項による不処分決定は、非行事実が認められないことを理由とするものであっても、刑事補償法一条一項にいう「無罪の裁判」には当たらない。
非行事実が認められないことを理由とする不処分決定と刑事補償
刑事補償法1条1項,少年法23条2項
判旨
非行事実なしを理由とする少年法の不処分決定は、刑事補償法上の「無罪の裁判」および刑訴法上の「無罪の判決」には当たらず、刑事補償や費用補償の対象とはならない。
問題の所在(論点)
非行事実なしを理由とする少年法の不処分決定が、刑事補償法1条1項の「無罪の裁判」および刑事訴訟法188条の2第1項の「無罪の判決」に含まれるか。含まれないとする解釈は憲法40条(刑事補償)および14条(平等権)に違反しないか。
規範
刑事補償法1条1項にいう「無罪の裁判」とは、刑事訴訟法上の手続における無罪の確定裁判を指す。また、少年審判における不処分決定は、刑事手続とは性質を異にする上、既判力(二重危険禁止)に準ずる効力も有しないため、同条項の「無罪の裁判」や刑訴法188条の2第1項の「無罪の判決」には含まれない。このような解釈は憲法40条および14条に違反しない。
重要事実
申立人は、7日間にわたる身体拘束を受けた後、少年法23条2項に基づき「非行事実が認められない」ことを理由とする不処分決定を受けた。これに対し、申立人は右決定が刑事補償法1条1項の「無罪の裁判」および刑訴法188条の2第1項の「無罪の判決」に当たると主張し、身体拘束に対する補償等を求めて抗告した。
事件番号: 平成3(し)62 / 裁判年月日: 平成4年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】非行事実が認められないことを理由に保護処分に付さない旨の決定を受けた者に対し、身体の自由の拘束による補償を行わなくても、憲法40条、29条3項、14条に違反しない。 第1 事案の概要:少年法に基づき身体の拘束(鑑別所収容等)を受けた少年に対し、家庭裁判所が非行事実が認められないことを理由として、同…
あてはめ
少年審判の手続は、刑罰権の存否を確定させる刑事訴訟手続とはその性質を異にするものである。また、不処分決定には、その後に刑事訴追や再度の審判に付することを妨げる効力(一事不理再理の禁止)が認められない。したがって、実質的に非行事実が否定された場合であっても、形式的・性質的に「無罪の裁判」には該当しないといえる。憲法40条は、刑事手続において無罪となった者への補償を保障するものであり、性質の異なる少年法上の措置について補償規定がないからといって直ちに同憲法条項や平等原則に反するとは解されない。
結論
不処分決定は「無罪の裁判」等には当たらず、本件補償請求は認められない。憲法違反も認められない。
実務上の射程
少年事件における身体拘束(観護措置等)について、刑事補償法を直接適用・類推適用することは否定された。答案上は、少年法の合憲性や刑事補償の範囲を論じる際の判例として活用すべきである。なお、本判決後の立法により、現在は「少年に対する補償措置」が別途制度化されている点に留意が必要だが、本判決の法的性質論としての論理は依然として重要である。
事件番号: 昭和58(し)124 / 裁判年月日: 昭和61年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不起訴となった別罪の逮捕・勾留期間を、無罪となった本罪の刑事補償の対象とするには、実質的に本罪の捜査に利用されたか、またはそれと同視すべき特別の事情があることを要する。両事件に関連性があるだけでは足りず、拘禁期間中に本罪の核心に迫る重要な裏付捜査が行われている必要がある。 第1 事案の概要:申立人…
事件番号: 昭和30(し)15 / 裁判年月日: 昭和31年12月24日 / 結論: 破棄差戻
憲法第四〇条にいう「抑留又は拘禁」中には、たとえ不起訴になつた事実に基く抑留または拘禁であつても、そのうちに実質上は、無罪となつた事実の取調のための抑留または拘禁であると認められるものがあるときは、その部分の抑留および拘禁もまたこれを包含するものと解するを相当とし、刑事補償法第一条第一項の「未決の抑留又は拘禁」とは右憲…
事件番号: 昭和34(し)44 / 裁判年月日: 昭和34年10月29日 / 結論: 棄却
併合罪中一部無罪の場合、本刑に算入された未決勾留日数については未決勾留としては刑事補償の請求はできない。
事件番号: 昭和54(し)118 / 裁判年月日: 昭和54年12月14日 / 結論: 棄却
刑訴法一八八条の二、一八八条の六により補償すべき費用のうち、被告人又は弁護人であつた者に対する旅費、日当、宿泊料については、これらの者が公判準備及び公判期日に出頭した時点を、また、弁護人であつた者に対する報酬については、当該各審級の判決宣告の時点を、それぞれ基準として算定すべきである。