併合罪中一部無罪の場合、本刑に算入された未決勾留日数については未決勾留としては刑事補償の請求はできない。
本刑に算入された未決勾留と刑事補償。
刑事補償法1条1項,刑事補償法1条2項,刑事補償法3条2号
判旨
併合罪のうち一部が無罪となった場合において、未決勾留日数が有罪となった事実の本刑に算入されたときは、その部分は刑の執行と同一視されるため、刑事補償の対象とはならない。
問題の所在(論点)
併合罪の一部について無罪の裁判を受けた者が刑事補償を請求する場合(刑事補償法3条2号)、有罪となった他罪の本刑に算入された未決勾留日数は、同条に基づく補償の対象となるか。
規範
未決勾留は、本刑に算入(裁定算入または法定通算)されることによって、刑事補償の対象としては刑の執行と同一視すべきものとなり、もはや未決勾留そのものとしては刑事補償の対象とはならないと解すべきである。
重要事実
申立人に対し、併合罪として起訴された事件の本案において、一部の事実については無罪、一部の事実については有罪との判決が確定した。この際、全未決勾留日数のうち、有罪となった事実の本刑に対して裁定および法定算入された部分が存在したが、原決定は刑事補償法3条2号に基づき、当該算入部分を控除した残存日数についてのみ補償を認める決定を維持したため、申立人が特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和55(し)129 / 裁判年月日: 昭和55年12月9日 / 結論: 棄却
本刑に算入された未決勾留日数については、その刑が執行猶予付の場合においても、未決勾留としては刑事補償の対象とはならない。
あてはめ
本件における未決勾留日数のうち、有罪となった事実の本刑に算入された部分は、実質的に刑の執行に充てられたものと評価できる。そのため、当該部分は刑事補償制度における「未決勾留」としての性質を失い、刑の執行と同一視されるべき状態にある。したがって、刑事補償法3条2号の適用にあたっては、全未決勾留日数から本刑算入分を差し引いた残存日数のみを補償対象とすることが正当であるといえる。
結論
併合罪の一部無罪の場合、本刑に算入された未決勾留日数は刑事補償の対象とならず、算入されない残存日数のみが補償の対象となる。
実務上の射程
併合罪の一部無罪時における刑事補償法3条2号の解釈を示す。本刑算入による二重の利益(刑の減縮と補償金受領)を否定する実務上の運用を肯定する射程を持つ。答案上は、未決勾留日数の算入による評価の変容を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和30(し)15 / 裁判年月日: 昭和31年12月24日 / 結論: 破棄差戻
憲法第四〇条にいう「抑留又は拘禁」中には、たとえ不起訴になつた事実に基く抑留または拘禁であつても、そのうちに実質上は、無罪となつた事実の取調のための抑留または拘禁であると認められるものがあるときは、その部分の抑留および拘禁もまたこれを包含するものと解するを相当とし、刑事補償法第一条第一項の「未決の抑留又は拘禁」とは右憲…
事件番号: 平成6(し)127 / 裁判年月日: 平成6年12月19日 / 結論: その他
再審判決の一部有罪部分についての執行猶予付き本刑に裁定算入及び法定通算された未決勾留は、再審判決確定当時既に執行猶予期間が満了し本刑の執行の可能性がない場合には、刑事補償の対象となる。
事件番号: 昭和58(し)124 / 裁判年月日: 昭和61年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不起訴となった別罪の逮捕・勾留期間を、無罪となった本罪の刑事補償の対象とするには、実質的に本罪の捜査に利用されたか、またはそれと同視すべき特別の事情があることを要する。両事件に関連性があるだけでは足りず、拘禁期間中に本罪の核心に迫る重要な裏付捜査が行われている必要がある。 第1 事案の概要:申立人…
事件番号: 平成1(し)123 / 裁判年月日: 平成3年3月29日 / 結論: 棄却
少年法二三条二項による不処分決定は、非行事実が認められないことを理由とするものであっても、刑事補償法一条一項にいう「無罪の裁判」には当たらない。