本刑に算入された未決勾留日数については、その刑が執行猶予付の場合においても、未決勾留としては刑事補償の対象とはならない。
執行猶予付の本刑に算入された未決勾留と刑事補償
刑事補償法1条1項
判旨
本刑に算入された未決勾留日数は、判決が執行猶予付であっても、実刑の場合と同様にもはや刑事補償の対象とはならない。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予を言い渡す判決において、本刑に算入された未決勾留日数が、刑事補償法1条1項にいう補償の対象となるか。
規範
刑事補償法1条1項の「未決の留置」とは、刑の執行としての拘束ではない身分上の拘束を指す。本刑に算入された未決勾留日数は、法律上刑の執行を受けたものとみなされる(刑法21条)ため、その実質が実刑であるか執行猶予付であるかを問わず、同法に基づく補償の対象から除外される。
重要事実
抗告人は、刑事事件において未決勾留を受けたが、その後の判決で執行猶予が付され、未決勾留日数が本刑に算入された。抗告人は、執行猶予の場合の未決勾留算入は実質的な身体拘束の代替となっていないとして、刑事補償法1条および3条2号に基づき補償を請求したが、原審はこれを棄却した。
あてはめ
事件番号: 平成6(し)127 / 裁判年月日: 平成6年12月19日 / 結論: その他
再審判決の一部有罪部分についての執行猶予付き本刑に裁定算入及び法定通算された未決勾留は、再審判決確定当時既に執行猶予期間が満了し本刑の執行の可能性がない場合には、刑事補償の対象となる。
本件において、抗告人の未決勾留日数は判決により本刑に算入されている。未決勾留の算入は、実刑判決の場合に事実上の刑の先取りとしての性質を有すると同様に、執行猶予付判決においても法律上の評価として刑の執行の一部に充当されたものと解される。したがって、当該期間は「未決」の留置としての性格を失い、刑事補償の要件を充足しない。
結論
本刑に算入された未決勾留日数は、執行猶予付判決の場合であっても刑事補償の対象とならない。
実務上の射程
刑事補償の可否を論じる際、未決勾留が本刑に算入された事実がある場合には、本判例を根拠に「補償対象となる未決の拘禁」に当たらないと判断する。実刑か執行猶予かを問わず、算入の有無のみを画一的な基準とする実務の確立を示した射程の広い判例である。
事件番号: 昭和34(し)44 / 裁判年月日: 昭和34年10月29日 / 結論: 棄却
併合罪中一部無罪の場合、本刑に算入された未決勾留日数については未決勾留としては刑事補償の請求はできない。
事件番号: 昭和58(し)124 / 裁判年月日: 昭和61年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不起訴となった別罪の逮捕・勾留期間を、無罪となった本罪の刑事補償の対象とするには、実質的に本罪の捜査に利用されたか、またはそれと同視すべき特別の事情があることを要する。両事件に関連性があるだけでは足りず、拘禁期間中に本罪の核心に迫る重要な裏付捜査が行われている必要がある。 第1 事案の概要:申立人…
事件番号: 昭和30(し)15 / 裁判年月日: 昭和31年12月24日 / 結論: 破棄差戻
憲法第四〇条にいう「抑留又は拘禁」中には、たとえ不起訴になつた事実に基く抑留または拘禁であつても、そのうちに実質上は、無罪となつた事実の取調のための抑留または拘禁であると認められるものがあるときは、その部分の抑留および拘禁もまたこれを包含するものと解するを相当とし、刑事補償法第一条第一項の「未決の抑留又は拘禁」とは右憲…
事件番号: 平成3(し)62 / 裁判年月日: 平成4年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】非行事実が認められないことを理由に保護処分に付さない旨の決定を受けた者に対し、身体の自由の拘束による補償を行わなくても、憲法40条、29条3項、14条に違反しない。 第1 事案の概要:少年法に基づき身体の拘束(鑑別所収容等)を受けた少年に対し、家庭裁判所が非行事実が認められないことを理由として、同…