再審判決の一部有罪部分についての執行猶予付き本刑に裁定算入及び法定通算された未決勾留は、再審判決確定当時既に執行猶予期間が満了し本刑の執行の可能性がない場合には、刑事補償の対象となる。
再審判決の一部有罪部分についての執行猶予付き本刑に裁定算入及び法定通算された未決勾留と刑事補償
刑事補償法1条1項
判旨
再審判決により刑の本刑に算入された未決勾留について、その判決確定当時、既に刑の執行と同一視される可能性が全くない場合には、刑事補償法1条1項に基づき刑事補償の対象となる。
問題の所在(論点)
再審判決において本刑に算入(裁定算入・法定通算)された未決勾留日数が、刑事補償法1条1項の「補償をすることができない」場合に該当するか。特に、執行猶予期間が実質的に満了している場合の算入の意義が問題となる。
規範
未決勾留が本刑に算入された場合、それが刑の執行と同一視される可能性(算入が被告人の利益となり二重利得防止の必要がある場合)があれば刑事補償の対象外となる。しかし、判決確定当時、既に未決勾留が刑の執行と同一視される可能性が全くないときには、当該未決勾留は刑事補償の対象となる。
重要事実
申立人は確定判決で有罪とされたが、再審において一部無罪、一部について懲役2年・執行猶予3年の判決を受けた。この再審判決では未決勾留日数521日が本刑に裁定算入または法定通算された。しかし、再審判決が確定した時点(平成6年)では、執行猶予期間の起算点となる当初の確定判決確定日(昭和24年)から既に3年以上が経過していた。
事件番号: 昭和55(し)129 / 裁判年月日: 昭和55年12月9日 / 結論: 棄却
本刑に算入された未決勾留日数については、その刑が執行猶予付の場合においても、未決勾留としては刑事補償の対象とはならない。
あてはめ
本件再審判決が確定した時点において、執行猶予期間は当初の確定判決確定日から起算して既に経過している。そのため、再審判決の確定と同時に執行猶予期間も満了したことになり、再審で言い渡された刑の執行の余地はもはや存在しない。したがって、本刑に算入された未決勾留日数が「刑の執行と同一視される可能性」は客観的に全くないといえる。このような場合、未決勾留の算入による利益(二重利得)は観念できず、刑事補償を否定する根拠を欠く。
結論
本刑に裁定算入及び法定通算された未決勾留日数についても、刑事補償の対象となる。原決定を取り消し、本件を高松高裁に差し戻す。
実務上の射程
本判決は、本刑への算入を理由に刑事補償を一律に否定した従来の実務を限定したものである。答案上は、一部無罪に伴う刑事補償の可否を論じる際、単なる形式的な「算入」の有無だけでなく、その算入が実質的に被告人の利益(刑の減免)として機能しているかという観点から、補償の要否を判断する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和34(し)44 / 裁判年月日: 昭和34年10月29日 / 結論: 棄却
併合罪中一部無罪の場合、本刑に算入された未決勾留日数については未決勾留としては刑事補償の請求はできない。
事件番号: 昭和58(し)124 / 裁判年月日: 昭和61年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不起訴となった別罪の逮捕・勾留期間を、無罪となった本罪の刑事補償の対象とするには、実質的に本罪の捜査に利用されたか、またはそれと同視すべき特別の事情があることを要する。両事件に関連性があるだけでは足りず、拘禁期間中に本罪の核心に迫る重要な裏付捜査が行われている必要がある。 第1 事案の概要:申立人…
事件番号: 平成1(し)123 / 裁判年月日: 平成3年3月29日 / 結論: 棄却
少年法二三条二項による不処分決定は、非行事実が認められないことを理由とするものであっても、刑事補償法一条一項にいう「無罪の裁判」には当たらない。