上告取下げの撤回が許されなかった事例
判旨
上訴の取下げによって上訴審の手続は既に終了しているのであるから、その後に取下げを撤回して審議の続行を求めることは認められない。
問題の所在(論点)
一度なされた適法な上訴の取下げ(刑事訴訟法359条以下参照)について、その後に「取下げの撤回」を認めて上訴審の手続を続行させることが許されるか。
規範
上訴の取下げは、それ自体によって上訴審の手続を確定的に終了させる効果を持つ。したがって、適法に取下げがなされた以上、その後になされた取下げの撤回は認められない。
重要事実
詐欺未遂および詐欺の被告事件について、被告人は控訴審判決に対し上告を申し立てた。しかし、その後被告人自身が自ら上告を取り下げた。その2日後、被告人は「家庭の事情」を理由として、書面により上告取下げを撤回し、上告審の審議続行を求める旨を申し立てた。
あてはめ
本件において、被告人は平成3年5月に上告を申し立てたが、同年7月12日に適法にこれを取り下げている。この取下げにより、当該上訴審の手続は法律上当然に終了したといえる。被告人はその後に家庭の事情を理由として撤回を申し立てているが、既に終了した手続を撤回によって復活させる法的根拠は存在しない。
結論
本件上告は取下げにより既に終了しており、取下げの撤回は認められない。
実務上の射程
刑事手続の安定性と明確性の観点から、適法な取下げ後の撤回を否定したものである。実務上、取下げが無効・取消しうる事由(錯誤・強制等)に基づかない限り、一度なされた取下げの効果を覆すことは極めて困難であることを示唆している。答案上は、上訴権放棄・取下げの不可逆性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和54(あ)236 / 裁判年月日: 昭和54年3月30日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟における上告取下げは、別件の執行猶予期間の満了に関する誤認があったとしても、当然に無効とはならず、一度有効になされた取下げの撤回は認められない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗等の罪で有罪判決を受け、上告を申し立てたが、その後、別件の執行猶予期間がすでに満了したものと誤認し、上告を取り下げ…
事件番号: 昭和24(れ)1165 / 裁判年月日: 昭和24年9月20日 / 結論: 棄却
本件は被告人から第一審判決に對し上訴(控訴)を申し立て、第二審判決は第一審判決が有罪と認めた窃盜の點については無罪を言渡し、刑も第一審判決が懲役三年だつたのを、第二審判決は懲役一年六月に處したものであつて、すなわち被告人の控訴申立はその理由ありと認められたのである。ところで舊刑訴法第五五六條第一項によれば「上訴申立後ノ…