権限なく通話可能度数が改ざんされたテレホンカードを売り渡すために交付する行為と刑法163条1項の罪の成否
刑法163条1項
判旨
変造された有価証券を、その真実でないことを秘して他人に交付する行為は、変造有価証券交付罪(刑法163条1項)を構成する。
問題の所在(論点)
変造された有価証券を他人に授与する行為が、刑法163条1項の「変造有価証券交付罪」に該当するか。
規範
刑法163条1項にいう「交付」とは、変造された有価証券を、その真実でないことを秘して他人に授与することをいう。本罪の保護法益は有価証券に対する公共の信用であり、偽造・変造された証券が流通置かれる危険性を防止する点にある。したがって、相手方が情を知らない場合に限らず、広く行使の目的をもって流通させる行為が含まれる。
重要事実
被告人は、変造された有価証券(具体的内容は本判決文からは不明だが、先行する平成3年4月5日決定の射程内とされる事案)を、他人に交付した。弁護人は、当該行為について変造有価証券交付罪の成立を争い、憲法31条違反および法令違反、量刑不当を理由として上告した。
あてはめ
有価証券の「交付」は、偽造・変造の事実を隠して行われる限り、受領者がその後に真実を知るか否かにかかわらず、証券の信用を害する流通の端緒となる。本件被告人の行為は、変造された証券を他人に交付するものであり、先行判例(最決平成3年4月5日)の判断枠組みに照らせば、有価証券の公共的信用を危うくする交付行為に該当すると評価される。
結論
被告人の行為について変造有価証券交付罪の成立を認めた原判断は正当であり、本罪が成立する。
実務上の射程
本決定は先行する平成3年4月5日第三小法廷決定を引用し、変造有価証券交付罪の成立範囲を確定させている。答案上は、偽造・変造有価証券を(行使目的で)他人に渡す行為について、行使罪(163条1項前段)との区別を意識しつつ、交付罪の成否を検討する際の根拠として用いる。
事件番号: 平成2(あ)859 / 裁判年月日: 平成3年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】変造された有価証券を、その情を知らない者に交付した場合には、変造有価証券交付罪(刑法163条1項)が成立する。 第1 事案の概要:本判決(決定)の文言上、具体的な事実は示されていない。しかし、参照されている最三小決平成3年4月5日等の事案を前提とすると、被告人が変造された有価証券(額面金額等が書き…
事件番号: 平成2(あ)917 / 裁判年月日: 平成3年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有価証券の記載内容に真正な権限なく変更を加え、その証券の証拠力を高める行為は、有価証券変造罪を構成する。また、変造された有価証券を他人に手渡す行為は、有価証券変造証券交付罪に該当する。 第1 事案の概要:被告人両名は、真正に発行された有価証券(具体的な種類は判決文からは不明。参照判例からはテレホン…
事件番号: 平成2(あ)791 / 裁判年月日: 平成3年4月5日 / 結論: 棄却
一 テレホンカードは、刑法一六二条、一六三条一項にいう「有価証券」に当たる。 二 テレホンカードの磁気情報部分に記録された通話可能度数を権限なく改ざんする行為は、刑法一六二条一項、一六三条一項にいう「変造」に当たる。 三 変造されたテレホンカードをカード式公衆電話機に挿入して使用する行為は、刑法一六二条、一六三条一項に…