権限なく通話可能度数が改ざんされたテレホンカードを売り渡す行為と刑法163条1項の罪の成否
刑法163条1項
判旨
変造有価証券をその性質に応じて利用可能な状態に置く行為は、変造有価証券交付罪(刑法163条1項)を構成する。
問題の所在(論点)
刑法163条1項における「交付」の意義、特に相手方が変造の事実を知っている場合であっても「交付」に該当し、変造有価証券交付罪が成立するかが問題となる。
規範
刑法163条1項にいう「交付」とは、有価証券の占有を移転させることを指し、相手方がその有価証券が偽造・変造されたものであることを知っているか否かを問わない。また、行使の目的をもって受領し、または第三者に更に交付させる目的で授受される場合であっても、同罪が成立すると解すべきである。
重要事実
被告人は、真実の約束手形の支払期日や金額等を書き換えることで作成された変造有価証券を、その事情を知る第三者に対して手渡した。この行為が、刑法163条1項の「交付」に該当し、変造有価証券交付罪が成立するかどうかが争われた。なお、具体的な取引の背景や当事者間の合意の詳細については、本判決文からは不明である。
あてはめ
本件において被告人が行った行為は、変造された約束手形の占有を他者に移転させるものである。交付罪の趣旨は、偽造・変造された有価証券の流通を防止し、有価証券に対する公衆の信頼を保護することにある。したがって、相手方が変造の事実を認識している場合であっても、占有の移転によって将来的に当該証券がさらに流通し、決済システムを害する危険が生じる以上、「交付」にあたると評価される。本件被告人の行為も、かかる危険を惹起する占有移転行為に他ならない。
結論
被告人の行為は変造有価証券交付罪を構成し、原判決の判断は正当である。
実務上の射程
本決定は先行する同種判例(最決平成3年4月5日)を引用し、交付の相手方の主観(善意・悪意)を問わず交付罪が成立することを再確認したものである。答案上は、行使罪(161条)が成立しない場合(相手方が偽造を知っている場合)であっても、交付罪が成立し得ることを示す論拠として利用できる。
事件番号: 平成3(あ)14 / 裁判年月日: 平成3年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】変造された有価証券であっても、それを真正なものとして他人に交付する行為は、刑法163条1項の変造有価証券交付罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人は、本来の券面金額や内容が改ざんされた変造有価証券(具体的な券種や変造内容は判決文からは不明)を、あたかも真正な有価証券であるかのように装って他人に交…
事件番号: 平成2(あ)917 / 裁判年月日: 平成3年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有価証券の記載内容に真正な権限なく変更を加え、その証券の証拠力を高める行為は、有価証券変造罪を構成する。また、変造された有価証券を他人に手渡す行為は、有価証券変造証券交付罪に該当する。 第1 事案の概要:被告人両名は、真正に発行された有価証券(具体的な種類は判決文からは不明。参照判例からはテレホン…
事件番号: 平成2(あ)791 / 裁判年月日: 平成3年4月5日 / 結論: 棄却
一 テレホンカードは、刑法一六二条、一六三条一項にいう「有価証券」に当たる。 二 テレホンカードの磁気情報部分に記録された通話可能度数を権限なく改ざんする行為は、刑法一六二条一項、一六三条一項にいう「変造」に当たる。 三 変造されたテレホンカードをカード式公衆電話機に挿入して使用する行為は、刑法一六二条、一六三条一項に…