一 テレホンカードは、刑法一六二条、一六三条一項にいう「有価証券」に当たる。 二 テレホンカードの磁気情報部分に記録された通話可能度数を権限なく改ざんする行為は、刑法一六二条一項、一六三条一項にいう「変造」に当たる。 三 変造されたテレホンカードをカード式公衆電話機に挿入して使用する行為は、刑法一六二条、一六三条一項にいう「行使」に当たる。
一 テレホンカードと刑法一六二条、一六三条一項にいう「有価証券」 二 テレホンカードの磁気情報部分に記録された通話可能度数を権限なく改ざくする行為と刑法一六二条一項、一六三条一項にいう「変造」 三 変造されたテレホンカードをカード式公衆電話機に挿入して使用する行為と刑法一六二条、一六三条一項にいう「行使」
刑法162条,刑法163条1項
判旨
テレホンカードは、磁気情報と券面の記載・外観が一体となって電話役務の提供を受ける権利を表示しており、刑法上の有価証券に当たる。そのため、その磁気情報の度数を権限なく改ざんする行為は、有価証券変造罪を構成する。
問題の所在(論点)
テレホンカードが刑法162条、163条にいう「有価証券」に当たるか。また、その磁気情報を書き換える行為が有価証券の「変造」に当たるか。
規範
1. 有価証券とは、財産上の権利が証券に表示され、その表示された権利の行使に証券の占有を必要とするものをいう。2. 有価証券は必ずしも「文書」である必要はなく、可読性のない磁気情報部分が含まれていても、券面の記載や外観と一体となって権利を化体させているといえる場合は、有価証券に当たる。3. 有価証券の「変造」とは、真正に作成された有価証券に権限なく変更を加えることをいい、「行使」とは、その用法に従って真正なものとして使用することをいう。
重要事実
被告人は、行使の目的をもって、真正なテレホンカード(50度数)の磁気情報に記録された通話可能度数を1998度数に書き換えた。その後、第三者に対し、度数を改ざんした旨を伝えて当該カードを売り渡した。
事件番号: 平成2(あ)917 / 裁判年月日: 平成3年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有価証券の記載内容に真正な権限なく変更を加え、その証券の証拠力を高める行為は、有価証券変造罪を構成する。また、変造された有価証券を他人に手渡す行為は、有価証券変造証券交付罪に該当する。 第1 事案の概要:被告人両名は、真正に発行された有価証券(具体的な種類は判決文からは不明。参照判例からはテレホン…
あてはめ
1. テレホンカードは、発行情報や残度数情報が磁気記録されているが、これを公衆電話機に挿入すれば度数が表示されるシステムとなっている。磁気情報部分と券面記載・外観を一体としてみれば、電話役務を受ける権利が証券上に表示され、かつ、その行使にカードの占有を要するため、有価証券といえる。2. 昭和62年改正で電磁的記録の規定が新設された際、有価証券に改正がなかったからといって、テレホンカードのような形態が有価証券から除外されたとは解されない。3. 本件では、真正なカードの磁気情報を権限なく改ざんしており、有価証券の「変造」に当たる。また、これを売り渡す行為は「交付」に当たる。
結論
テレホンカードは有価証券に当たり、度数改ざん行為は有価証券変造罪、その後の売却行為は変造有価証券交付罪を構成する。
実務上の射程
テレホンカードのような「準文書」的性質を持つ証券について、有価証券概念を肯定した重要判例である。ただし、券面記載や外観を欠く「ホワイトカード」については、本判決の論理(一体性)からは有価証券性が否定される可能性が高い点に注意を要する。なお、現在は支払用カード電磁的記録等に関する罪(刑法163条の2以下)が新設されており、実務上はそちらの成否も検討すべきである。
事件番号: 平成2(あ)1148 / 裁判年月日: 平成3年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】変造有価証券をその性質に応じて利用可能な状態に置く行為は、変造有価証券交付罪(刑法163条1項)を構成する。 第1 事案の概要:被告人は、真実の約束手形の支払期日や金額等を書き換えることで作成された変造有価証券を、その事情を知る第三者に対して手渡した。この行為が、刑法163条1項の「交付」に該当し…