テレホンカードの通話可能度数を権限なく改ざんして売り渡す行為と刑法162条1項・163条1項の罪の成否
刑法162条1項,刑法163条1項
判旨
有価証券の記載内容に真正な権限なく変更を加え、その証券の証拠力を高める行為は、有価証券変造罪を構成する。また、変造された有価証券を他人に手渡す行為は、有価証券変造証券交付罪に該当する。
問題の所在(論点)
真正な有価証券の記載内容に権限なく変更を加える行為、およびその証券を他人に交付する行為が、それぞれ有価証券変造罪(刑法162条1項)および変造有価証券交付罪(同法163条1項)を構成するか。
規範
刑法162条1項の有価証券変造罪における「変造」とは、権限のない者が真正な有価証券の非本質的部分に変更を加え、新たな証明力を生じさせることをいう。また、同法163条1項の変造有価証券交付罪は、変造された証券を、その情を知らない相手方に交付することによって成立する。
重要事実
被告人両名は、真正に発行された有価証券(具体的な種類は判決文からは不明。参照判例からはテレホンカード等のプリペイドカードと推認される)について、権限がないにもかかわらずその内容に変更を加えた。さらに、当該変造された有価証券を他人に手渡した。
あてはめ
被告人らは、既存の真正な有価証券に対し、発行者の意思に基づかずにその記載内容を変更している。これは、証券の公共的信用を害し、新たな証明力を付与する行為であるから「変造」に該当すると解される。また、当該変造された証券を他人に手渡す行為は、変造の情を知らない者に流通させる態様であるため、「交付」に該当すると評価される。
結論
被告人らの行為について、有価証券変造罪および同交付罪の成立を認めた原判断は正当であり、各罪が成立する。
実務上の射程
本決定は、磁気カード等のプリペイドカードが有価証券に該当することを前提に、その磁気情報の改ざん等が変造にあたることを示した先例(平成3年4月5日決定等)を維持するものである。答案上は、磁気記録の書き換えが「変造」に含まれるか、またその交付が罪になるかを論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 平成2(あ)1148 / 裁判年月日: 平成3年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】変造有価証券をその性質に応じて利用可能な状態に置く行為は、変造有価証券交付罪(刑法163条1項)を構成する。 第1 事案の概要:被告人は、真実の約束手形の支払期日や金額等を書き換えることで作成された変造有価証券を、その事情を知る第三者に対して手渡した。この行為が、刑法163条1項の「交付」に該当し…
事件番号: 平成2(あ)791 / 裁判年月日: 平成3年4月5日 / 結論: 棄却
一 テレホンカードは、刑法一六二条、一六三条一項にいう「有価証券」に当たる。 二 テレホンカードの磁気情報部分に記録された通話可能度数を権限なく改ざんする行為は、刑法一六二条一項、一六三条一項にいう「変造」に当たる。 三 変造されたテレホンカードをカード式公衆電話機に挿入して使用する行為は、刑法一六二条、一六三条一項に…