所得税法9条1項11号イ(昭和63年法律第109号による改正前のもの)の合憲性
憲法31条,憲法30条,憲法84条,所得税法9条1項11号イ
判旨
租税法規において、法律が課税対象となる所得の性質を明示した上で、その具体的な範囲の策定を政令に委任することは、憲法84条の租税法律主義に反しない。
問題の所在(論点)
法律が課税対象の概括的な基準のみを示し、その具体的な範囲の決定を政令に委任することが、憲法84条(租税法律主義)および憲法31条(適正手続・罪刑法定主義)に抵触しないか。
規範
租税法律主義(憲法84条)の下においても、課税要件の細目を政令に委任することは許容される。具体的には、法律自体において課税対象となる所得の性質(本件では継続的な有価証券売買による所得)を明示した上で、その範囲の具体的な定めを政令に委任する形式であれば、白紙委任には当たらず憲法に違反しない。
重要事実
被告人は、有価証券の継続的な売買により多額の所得を得ていたが、これを申告しなかった。当時の所得税法9条1項11号イは、原則として有価証券の譲渡による所得を非課税としつつ、「継続して有価証券の買入れ及び売却をすることによる所得」については課税対象とし、その詳細な判定基準を政令(所得税法施行令)に委任していた。弁護人は、この政令への委任が租税法律主義および罪刑法定主義(憲法31条、84条等)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件の所得税法の規定は、有価証券売買による所得のうち課税対象となるものを「継続して」行われるものと法律自体の文言で限定している。このように、課税の対象となる所得の性質を法律において明示した上で、技術的・専門的な判断を要する具体的な範囲の画定を政令に委任することは、納税者に予測可能性を与えるものであり、議会による立法権の放棄には当たらない。したがって、かかる委任の態様は憲法が求める租税法律主義の要請に適合すると解される。
事件番号: 平成3(あ)769 / 裁判年月日: 平成6年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】租税法規において、法律が課税対象の要件を明示した上で、その詳細な範囲の算定を政令に委任することは、憲法84条の租税法律主義に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、有価証券の継続的売買による所得について所得税の申告を行わなかった。当時の所得税法9条1項11号イは、継続的な有価証券売買による所得を…
結論
本件の所得税法の委任規定は憲法84条、31条等に違反せず、上告を棄却する。
実務上の射程
租税法における白紙委任禁止の原則に関する判例である。法律で課税のメルクマール(本件では継続性)を示していれば、詳細な数値的基準(回数や数量等)を政令に委任しても租税法律主義に反しないという判断枠組みとして、憲法や行政法の答案において「委任の具体性・個別性」を論じる際の論拠となる。
事件番号: 昭和55(あ)1491 / 裁判年月日: 昭和59年3月16日 / 結論: 棄却
所得税法九条一項一一号イの規定は、憲法八四条に違反しない。