免訴判決に対し被告人が上訴することの可否
刑訴法414条,刑訴法385条1項
判旨
免訴の判決に対し、被告人が無罪判決を求めて上訴することは、上訴の利益を欠くため許されない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、免訴の判決を受けた被告人が、無罪判決を求めて上告することが認められるか。すなわち、免訴判決に対する被告人の上訴の利益の有無が問題となる。
規範
上訴制度は、原判決の誤りを是正して、上訴人に有利な裁判への変更を求めるものである。そのため、上訴が適法となるためには、原判決よりも有利な裁判を求める「上訴の利益」が必要である。免訴判決(刑訴法337条)は、実体的な有罪・無罪の判断を排する形式裁判であり、被告人を刑罰から免れさせるという点では目的を達している。したがって、被告人がさらなる有利(無罪判決)を求めて免訴判決を不服とすることは、特段の事情のない限り、上訴の利益を欠くものと解すべきである。
重要事実
被告人は外国人登録法違反の罪で起訴されたが、広島高等裁判所岡山支部は、時効の完成等の理由により免訴の判決を言い渡した。これに対し、被告人は無罪判決を求めるなどの意図から、上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、原審は被告人に対し免訴を言い渡しており、これにより被告人は処罰を免れるという実質的な利益を得ている。被告人が主張する「無罪」は実体上の判断であるが、免訴は訴訟条件の欠如を理由に手続を打ち切る形式裁判であり、両者は性質を異にする。刑事訴訟法上、免訴という有利な結果が得られている以上、さらに実体的な無罪を求めて上級審の判断を仰ぐことは、現行の上訴制度の予定するところではない。したがって、本件上告は上訴の利益を欠く不適法なものであるといえる。
結論
免訴の判決に対して被告人が上訴することは許されない。よって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法における「上訴の利益」の基本判例である。答案上は、被告人に不利な判決(有罪等)から免訴へ変更を求める上訴は認められる一方で、免訴から無罪への変更を求める上訴は認められないという区別を論じる際に用いる。実務上、免訴・公訴棄却といった形式裁判に対する被告人の不服申立てを制限する根拠となる。
事件番号: 平成1(あ)597 / 裁判年月日: 平成2年2月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】免訴の判決に対して、被告人が無罪を主張して上訴することは許されない。上訴は原判決の不当な不利益を是正するための制度であり、形式的裁判である免訴判決は被告人に直接的な不利益を及ぼすものではないため、上訴の利益が認められないからである。 第1 事案の概要:被告人が外国人登録法違反の罪で起訴された。原審…