免訴判決に対し被告人が上訴することの可否
刑訴法414条,刑訴法385条1項
判旨
免訴の判決に対して、被告人が無罪を主張して上訴することは許されない。上訴は原判決の不当な不利益を是正するための制度であり、形式的裁判である免訴判決は被告人に直接的な不利益を及ぼすものではないため、上訴の利益が認められないからである。
問題の所在(論点)
免訴の判決が言い渡された場合、被告人がさらに有利な「無罪」の判決を求めて上訴することが認められるか(被告人の上訴の利益の有無)。
規範
上訴制度の本旨は、原判決の誤りによって申立人に生じた不利益を是正し、救済することにある。したがって、上訴が認められるためには、申立人に「上訴の利益」が存在することが必要である。免訴判決のような形式的裁判は、実体的な有罪・無罪の判断を回避するものであり、被告人に法的な不利益を課すものではないため、無罪を求めて免訴判決を不服とすることはできない。
重要事実
被告人が外国人登録法違反の罪で起訴された。原審(東京高等裁判所)は、被告人に対し免訴の判決を言い渡した。これに対し、被告人は無罪を主張して最高裁判所に上告を申し立てた。
あてはめ
免訴判決は、訴訟条件の欠如を理由に手続を打ち切る形式的裁判である。判決文によれば、被告人は免訴の判決に対して上訴を申し立てているが、免訴は有罪の言渡しではないため、被告人に刑罰や前科といった法的な不利益を及ぼすものではない。仮に被告人が無罪を主張したとしても、すでに免訴によって刑罰を免れている以上、救済すべき不利益が存在しないため、上訴の利益は認められない。
結論
被告人は免訴の判決に対して上訴することは許されない。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法における「上訴の利益」の基本判例として重要である。実務上、被告人側からは「無罪判決」を勝ち取る実効的利益(名誉回復等)を理由に上訴の利益を肯定する見解もあるが、判例は一貫して形式的裁判(免訴・公訴棄却)からの上訴の利益を否定している。答案作成時には、上訴の一般的要件としての「不利益」を法的なものに限定する論理として活用する。
事件番号: 平成1(あ)783 / 裁判年月日: 平成2年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】免訴の判決に対し、被告人が無罪判決を求めて上訴することは、上訴の利益を欠くため許されない。 第1 事案の概要:被告人は外国人登録法違反の罪で起訴されたが、広島高等裁判所岡山支部は、時効の完成等の理由により免訴の判決を言い渡した。これに対し、被告人は無罪判決を求めるなどの意図から、上告を申し立てた。…