法定刑超過による非常上告
刑訴法458条1項
判旨
普通仮運転免許を受けた者が、法令で定められた有資格者を同乗させずに自動車を運転した場合において、法定刑(10万円以下の罰金)の上限を超えて科された罰金20万円の略式命令は、法令に違反し被告人に不利益であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
普通仮運転免許の条件(有資格者の同乗)に違反した運転(道路交通法118条1項8号、87条2項後段)に対し、当時の法定刑である「10万円以下の罰金」を超える「罰金20万円」を科した略式命令の適法性。
規範
刑事裁判において科される刑罰は、罪刑法定主義の観点から、各罰則条項が定める法定刑の範囲内でなければならない。確定した略式命令において、適用法条の定める上限を超えた刑を科した場合には、法令に違反し、かつ被告人のため不利益であるといえる(刑訴法458条1号)。
重要事実
被告人は普通仮運転免許を受けた者であるが、練習のため普通乗用自動車を運転するに際し、運転者席の横の乗車装置に有資格者を同乗させずに運転した。簡易裁判所は、道路交通法118条1項8号、87条2項後段を適用し、被告人を罰金20万円に処する略式命令を発し、これは確定した。
あてはめ
本件で適用された道路交通法118条1項8号(当時)の法定刑は「10万円以下の罰金」である。しかし、原略式命令は被告人に対し「罰金20万円」を科している。これは明らかに法定刑の上限を超過しており、法の定める範囲外の刑を科したものといえる。したがって、当該命令は「法令に違反」し、かつ重すぎる刑を科している点で「被告人のため不利益」であると評価される。
事件番号: 平成16(さ)3 / 裁判年月日: 平成16年12月9日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において法定刑の限度を超えた罰金を科したことは、法令に違反し、かつ被告人の不利益になるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:1. 被告人は、普通仮運転免許を受けた者であるが、運転者席の横に有資格者を同乗させずに練習のため普通乗用自動車を運転した(道路交通法87条2…
結論
原略式命令を破棄する。被告人を、法定刑の範囲内である罰金5万円に処する。
実務上の射程
非常上告の手続において、確定判決の誤りを是正する実務上の判断枠組みを示すものである。特に、法定刑の誤認という明白な法令違反がある場合には、刑訴法458条に基づき、判決(または命令)の破棄および自判がなされることを確認している。
事件番号: 平成9(さ)2 / 裁判年月日: 平成9年4月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において法定刑の上限を超える罰金刑を科したことは、法令に違反し、かつ被告人に不利益な裁判であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は酒気帯び状態で普通乗用自動車を運転した。釧路簡易裁判所は、道路交通法違反(酒気帯び運転)の事実を認定し、被告人を罰金7万円に…
事件番号: 平成9(さ)1 / 裁判年月日: 平成9年4月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】酒気帯び運転の法定刑の上限(罰金5万円)を超えて罰金7万円を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は平成6年6月28日、呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールを保有する状態で普通乗用自動車を運転した。…
事件番号: 平成9(さ)3 / 裁判年月日: 平成9年4月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において法定刑の限度額を超える罰金刑を科したことは、法令に違反し、かつ被告人の不利益になるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、酒気を帯びた状態で普通乗用自動車を運転した(酒気帯び運転)。標津簡易裁判所は、被告人を罰金7万円に処する旨の略式命令を発付し、…
事件番号: 平成15(さ)3 / 裁判年月日: 平成15年10月9日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において、併合罪の処断刑の制限(刑法48条2項)を超えた罰金刑を科したことは、法令に違反し、かつ被告人のため不利益であるため、非常上告により破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人は、無免許運転、信号無視、及び免許証の不返納の3つの事実により略式命令を受けた。それぞれの法定刑(罰金)は、…