暴力団組長を警護するための配下組員らによるけん銃等の所持につき同組長に共謀共同正犯の成立を認めた控訴審の判断が是認された事例
刑訴法411条,刑法60条
判旨
暴力団組長が、同行する配下組員らの拳銃等携帯を概括的・確定的に認識・認容していた場合、実質的にこれらを持たせていたと評し得、拳銃等の所持について共謀共同正犯が成立する。
問題の所在(論点)
直接の所持者ではない暴力団組長について、配下組員による拳銃携帯の事実を認識・認容しているに留まる場合であっても、銃砲刀剣類所持等取締法違反(所持)の共謀共同正犯が成立するか。
規範
物理的な所持をしていない者であっても、他者の所持を概括的・確定的に認識し、かつ認容しており、実質的にその者に所持させていたと評し得る関係にある場合には、所持の共謀共同正犯が成立する。
重要事実
暴力団の組長である被告人が、移動に際して配下の組員らを同行させていた。その際、一部の組員らが被告人を警護する目的で拳銃等を携帯・所持していることについて、被告人は概括的ではあるものの、確定的にこれを認識し、かつ認容していた。
あてはめ
被告人は組長として配下組員を同行させており、その警護目的での拳銃携帯を認識・認容していた。これは単なる放置ではなく、自己の警護のために「実質的にこれらの者に所持させていた」といえる。したがって、被告人と組員との間に、拳銃等の所持についての意思の連絡および正犯意思が認められ、共謀が成立すると解される。
事件番号: 平成18(あ)1124 / 裁判年月日: 平成21年10月19日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】暴力団の抗争において、配下組員が対立組織の会長を殺害した際、上位組織の組長が殺害計画を事前に認識し、これを当然のこととして容認(共謀)していたと推認される場合には、当該組長は殺人罪の共同正犯としての責任を免れない。 第1 事案の概要:1.対立組織との間で激しい抗争状態にあり、最高幹部が襲撃される等…
結論
被告人に拳銃等所持の共謀共同正犯が成立するとした原判断は正当である。
実務上の射程
組織犯罪において、上位者が配下の具体的行為を詳細に把握していなくとも、「概括的・確定的」な認識・認容があれば共謀を認め得ることを示した事例である。特に「実質的に所持させていたと評し得る」という評価が重要であり、組織内の支配従属関係を前提とした共謀の認定において有用な枠組みとなる。
事件番号: 平成14(あ)164 / 裁判年月日: 平成15年5月1日 / 結論: 棄却
暴力団組長である被告人が,自己のボディガードらのけん銃等の所持につき,直接指示を下さなくても,これを確定的に認識しながら認容し,ボディガードらと行動を共にしていたことなど判示の事情の下においては,被告人は前記所持の共謀共同正犯の罪責を負う。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成15(あ)163 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: 棄却
反目状態にあった男とのけんか抗争等に備える目的で自車のダッシュボード内に入れておいた刃物を車外に持ち出した後に路上で携帯する行為は,同人運転の自動車に意図的に衝突されて自車が転覆し,車外にはい出す際に護身用にズボンのポケットに上記刃物を移し替えたという事情があることを考慮しても,その違法性が阻却される余地はない。
事件番号: 昭和58(あ)531 / 裁判年月日: 昭和59年3月6日 / 結論: 棄却
謀議の内容において被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせており、犯意自体が未必的なものであつたとしても、実行行為の意思が確定的であつたときは、いわゆる共謀共同正犯者としての殺人の故意の成立に欠けるところはない。
事件番号: 昭和26(れ)1847 / 裁判年月日: 昭和27年2月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯が成立するためには、共謀者の一人が共謀に基づいて犯罪を実行した場合には、実行行為に加担しなかった者も、その結果について共同正犯としての責任を負う。 第1 事案の概要:被告人A、B、C、Dらは、特定の犯罪を遂行することを互いに合意(共謀)した。その後、この共謀に基づき、メンバーの一部が実…