反則金納付を看過してされた略式命令に対する非常上告
刑訴法458条1号
判旨
交通反則通告制度に基づき反則金を納付した事実がある場合、同一の事実について公訴を提起することは道路交通法130条の2第3項及び128条2項により許されない。本件では誤った不納付通知に基づく起訴であったため、刑事訴訟法338条4号に基づき公訴を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
反則金を納付済みであるにもかかわらず、誤った不納付通知に基づきなされた公訴提起の有効性と、確定した略式命令の是非(刑事訴訟法338条4号の該当性)。
規範
道路交通法上の反則者が、通告に従い反則金を納付した場合、当該反則行為の属する事件について公訴を提起することができない(道路交通法128条2項)。これは、家庭裁判所裁判官による納付指示に基づき期限内に納付した場合も同様であり(同法130条の2第3項)、これに反する公訴提起は「公訴の提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」に該当し、公訴棄却の対象となる。
重要事実
被告人は道路交通法違反(通行禁止違反)につき、当時少年であったため家庭裁判所に送致された。被告人は家庭裁判所裁判官が発した納付指示に基づき、期限内に反則金を納付した。しかし、警察本部長が反則金を不納付であると誤って家庭裁判所長に通知したため、家庭裁判所は少年法20条により検察庁に送致し、検察官は被告人を略式起訴して罰金5000円の略式命令が確定した。
あてはめ
被告人は、道路交通法130条の2第3項に基づく家庭裁判所裁判官の納付指示に従い、期限内に反則金を納付している。この場合、同法128条2項が準用され、同一の事実について公訴を提起することは法律上許されない。本件の公訴提起は、警察側の誤通知という過誤に起因するものであり、実質的に公訴権のない事案に対する起訴である。したがって、本件公訴提起の手続は法令の規定に違反し無効といえる。
事件番号: 平成14(さ)3 / 裁判年月日: 平成15年4月15日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度に基づき反則金を納付した者に対しては、当該納付の対象となった行為について公訴を提起することができず、これに反した公訴提起は刑事訴訟法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(駐車禁止場所での駐車)の事実について、少年時に家庭裁判所へ送致され…
結論
本件公訴の提起は無効であるため、刑事訴訟法338条4号により公訴を棄却すべきである。確定した略式命令は法令に違反し被告人に不利益であるため、非常上告により破棄を免れない。
実務上の射程
交通反則通告制度の「二重処罰禁止」的機能を再確認する判例である。行政上の処理ミスにより起訴に至った場合、手続の適正を著しく欠くため、実体審理に入ることなく刑訴法338条4号で処理すべきことを示している。答案上は、公訴提起の有効性や訴訟条件の欠如を論じる際の具体的素材として活用できる。
事件番号: 平成1(さ)4 / 裁判年月日: 平成元年12月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告に基づき反則金を納付した事実があるにもかかわらず、手続上の不手際により公訴が提起された場合、道交法128条2項により公訴を提起することができないため、刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、道路交通法違反(速度超過)の事実につき、起訴に先立ち交通反…
事件番号: 昭和58(さ)2 / 裁判年月日: 昭和58年11月1日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度の対象となる「反則者」に対し、通告手続を経ずに公訴が提起された場合、その公訴提起の手続は法律の規定に違反するため、刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は道路標識による最高速度を14キロメートル超過して走行した。この行為は道交法125条1項の「反…
事件番号: 昭和56(さ)4 / 裁判年月日: 昭和57年9月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】交通反則者に対し、反則金の納付通告等を経ることなく提起された公訴は、公訴提起の手続が規定に違反したため無効であるとして、刑訴法338条4号に基づき棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を17キロメートル超過して普通乗用自動車を運転した。当初、交通事件原票の誤記により、被告人に…
事件番号: 平成28(さ)2 / 裁判年月日: 平成29年4月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の「反則者」に該当する場合、反則金納付の通告手続を経ないまま公訴を提起することは公訴提起の手続が規定に違反した(刑訴法338条4号)ものとして、公訴棄却の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は平成28年3月14日、通行禁止道路を過失により原付自転車で通行した。検察事務官は、同年3月1…