死刑の量刑が維持された事例(フィリピン人ホステス殺人等事件)
判旨
死刑の適用は、犯罪の性質、動機、態様、特に殺意の強固さや結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合考慮し、刑事責任が極めて重大であって、罪刑均衡や一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる。本件では、被告人が計画の中核を担い、信頼関係を悪用して2名を惨殺した強盗殺人の態様を重くみて、死刑の科刑を是認した。
問題の所在(論点)
強盗殺人・強盗致傷等の罪責を負う被告人に対し、死刑を適用することが、死刑の適用基準(いわゆる永山基準)に照らして適法か。特に、被告人の果たした役割と、前科の欠如等の有利な事情の評価が問題となる。
規範
死刑制度は憲法9条、13条、14条、25条、31条、36条に違反しない(判例)。死刑を選択するに際しては、犯罪の性質、動機、犯行態様(特に殺害方法の執拗さ・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも、一般予防の見地からも、死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に限り、許される。
重要事実
被告人は共犯者と共謀し、多額の現金所持が予想された被害者ら(女性2名)に対し、偽装結婚の紹介を装って居室に侵入した。被告人が被害者の注意を引く間に、共犯者がネクタイ等で絞首し、被告人も加勢して両名を窒息死させ、現金約1万3000円等を強奪した(強盗殺人)。また、パチンコ店での強盗致傷(被害者に6か月の重傷)にも中核的に関与した。被告人に前科はなく、公判では反省の情を示していたが、強盗殺人の主導的役割を果たしていた。
あてはめ
本件強盗殺人は、現金奪取のため無防備な被害者を欺いて殺害した卑劣かつ残忍な犯行であり、強固な殺意に基づく2名の生命奪取という結果は極めて重大である。被告人は情報の提供、侵入方法の考案、実行時における被害者の誘引・加勢など、計画から実行まで中核的な役割を果たしており、単なる従属的な立場ではない。強盗致傷事件においても積極的な加担が認められる。これらの事情に照らせば、前科がないこと、反省の情、共犯者との刑の均衡等の有利な事情を十分に考慮しても、被告人の刑事責任は誠に重いといえる。
事件番号: 平成13(あ)1286 / 裁判年月日: 平成17年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情況等を総合的に考慮し、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。本件のような主導的立場で敢行された3名の強盗殺人事犯等において、刑事責任は極めて重く、死刑の維持は妥当である。 第…
結論
本件における死刑の科刑は、罪責の重大性に照らし、やむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
死刑適用が争われる事案における論述の指針となる。特に「被害者2名」の事案において、犯行態様の残虐性、計画性、被告人の役割(中核性)がいかに重視されるかを具体的に示す事例として活用できる。
事件番号: 平成13(あ)1401 / 裁判年月日: 平成17年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の極めて重大な罪を犯した被告人に対し、犯行の態様が冷酷かつ残忍で結果が甚大であり、前科関係や動機にも酌むべき点がない場合、不遇な成育歴等の事情を考慮しても、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、約半月の間にスナック等の女性経営者計4名を窒息死または失血死させて現金を強奪する…
事件番号: 平成18(あ)2178 / 裁判年月日: 平成21年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑を判断するに際しては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、被害者の遺族の感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状の各事情を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑もやむを得ないと認められる場合には死刑を選択することができる。 第1 事案の概要:被告人は、パチンコ店への侵…
事件番号: 昭和63(あ)68 / 裁判年月日: 平成5年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、犯行の罪質、動機、態様、結果等の諸事情に照らして罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択はやむを得ないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は、離婚届を出して身を隠した妻の所在を隠匿したとして、妻の兄らに対して恨みを抱いた。被告人は恨みを晴らすとと…
事件番号: 平成12(あ)1160 / 裁判年月日: 平成16年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、強盗殺人事件において主導的な役割を果たし、犯行態様が冷酷かつ結果が重大である場合、共犯者の刑罰との均衡を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人はバカラ賭博の借金返済に窮し、共犯者と共謀して貴金属販売業者の男性と交際相手の女性を殺害して…