一 選挙権のない者又はいわゆる代理投票をした者の投票についても、その投票が何人に対してなされたかは、議員の当選の効力を定める手続において取り調べてはならない。 二 無資格者その他による帰属不明の無効投票が他の有効投票中に混入されたときは、それから無効投票を各当選者の得票から差し引いてみて最高位落選者より下位となる者は、これを当選者と決定することができない。
一 選挙権のない者のした投票と投票の秘密 二 無資格者その他による投票があつた場合の当選人決定の方法
地方自治法37条,地方自治法73条,地方自治法(昭25・3・15改正以前)66条,地方自治法(昭25・3・15改正以前)55条,衆議院議員選挙法39条,衆議院議員選挙法116条2項
判旨
選挙権のない者や代理投票による無効投票が混入した場合でも、その投票内容を取り調べることは許されず、当該無効投票数を差し引いた結果、最高位落選者の得票を下回る可能性がある当選者の当選は無効となる。
問題の所在(論点)
1. 選挙権のない者等による無効投票の内容(誰に投票したか)を、当選の効力を争う訴訟において調査することは許されるか。 2. 帰属不明の無効投票が混入した場合における、当選の効力の判断基準(当選無効の判定方法)はどうあるべきか。
規範
1. 憲法上の投票の秘密(15条4項)に照らし、選挙権のない者や代理投票等の無効投票についても、その投票が誰に対してなされたかを当選の効力を定める手続において取り調べることはできない。 2. 帰属不明の無効投票が有効投票中に混入した場合、それら無効投票の全数を当該当選者の得票から差し引いたとしてもなお最高位落選者の得票を上回ることが確定できない限り、その当選は無効とすべきである。
重要事実
宮城県の町議会議員選挙において、選挙権のない者(町外居住者)2名および他人に代筆させた代理投票者4名による計6票の無効投票が混入したことが判明した。原審は、これらの無効投票が誰に投じられたかを特定せず、当選人の得票からこれらを差し引く計算を行い、当選の効力を判断した。これに対し上告人は、無効投票の内容を調査すべきである、あるいは無効投票の内容が不明なまま当選を無効とするのは違法であると主張して争った。
事件番号: 昭和23(オ)98 / 裁判年月日: 昭和23年12月18日 / 結論: 棄却
一 本件のごとく、同日前に、町村制によつて、選舉が行われ、その選舉または當選の効力に關する異議申立期間の進行中において、地方自治法が施行せられた場合であつても同樣であつて、特に別段の規定はないのであるから、上告論旨のように、異議申立期間に關してのみ、既に癈止せられた町村制第三三條第一項の規定が癈止後においても効力を有す…
あてはめ
1. 投票の秘密は、適法な選挙人による投票か否かを問わず保障されるべきであり、無効投票の内容調査は認められない(前掲判例と同趣旨)。 2. 帰属不明の無効投票が存在する場合、そのすべてが特定の当選人に投じられた可能性を否定できない。したがって、保守的な計算手法として、当該無効投票の全数を当選者の得票から差し引いた数値を基準とし、これが最高位落選者の得票より下位となる場合には、当選の効力を維持することはできない(前掲判例と同趣旨)。本件においても原審はこの基準に従っており適法である。
結論
無効投票の内容調査は行わず、無効投票数を差し引く計算によって当選の効力を判断した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
選挙無効・当選無効訴訟における「投票の秘密」の絶対的保障と、無効投票混入時の当選有効性の判定計算(ワーストケース・シナリオによる控除)に関する基本判例である。無記名投票制の下で、誰に投じたか不明な票がある場合の当選の確実性を担保するための実務上の指針となる。
事件番号: 昭和27(オ)913 / 裁判年月日: 昭和28年3月26日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】帰属不明の潜在無効投票がある場合、各候補者の有効投票数の計算は、公職選挙法209条の2に基づき、各候補者の得票数に応じて当該無効投票数を按分して差し引くべきである。 第1 事案の概要:昭和26年の町議会議員選挙において、上告人Aは96票で当選し、訴外Eは95票で次点落選した。Eが当選無効を求めて提…
事件番号: 昭和33(オ)55 / 裁判年月日: 昭和33年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の「選挙の結果に異同を及ぼす虞」の有無は、原則として無効投票数と得票差の比較により判断すべきであり、代理投票の手続違背があっても、得票差が著しく大きい場合には選挙の結果に異同を及ぼす虞があるとは認められない。 第1 事案の概要:ある選挙において、投票管理者が立会人の立ち会いもなく自ら代…
事件番号: 昭和27(オ)692 / 裁判年月日: 昭和28年3月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】帰属不明の無効投票が混入している場合、改正公職選挙法に基づき、各候補者の得票数から当該無効投票数を各候補者の得票数に応じて按分して差し引いた上で当選の効力を判断すべきである。 第1 事案の概要:昭和26年4月に実施された青森県北津軽郡D議会議員一般選挙において、投票中に25票の「潜在的無効投票(帰…
事件番号: 昭和31(オ)1069 / 裁判年月日: 昭和32年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙管理執行の違法が広範囲にわたり、不正投票の総数も不明で選挙全体の自由公正が著しく害された場合には、当選人の得票数と無効票数を具体的に対比することなく、公職選挙法205条1項に基づき選挙を無効とすべきである。 第1 事案の概要:町議会議員選挙において、特定の投票所の投票立会人全員及び受付係が、少…