一 本件のごとく、同日前に、町村制によつて、選舉が行われ、その選舉または當選の効力に關する異議申立期間の進行中において、地方自治法が施行せられた場合であつても同樣であつて、特に別段の規定はないのであるから、上告論旨のように、異議申立期間に關してのみ、既に癈止せられた町村制第三三條第一項の規定が癈止後においても効力を有するものと解すべき根據はない。この場合は、町村制による異議申立期間が未經過の状態において、すなわち、右選舉に關して、選舉又は當選の効力を争い得る状況下において、地方自治法が施行されたのであるから、既に町村制の規定にもとずいて、進行していた異議申立期間が地方自治法の施行により、同法の規定に從つて、當然に伸張せられたものと解するのが相當である。 二 これを要するに本件のように無資格者その他による歸属不明の無効投票が他の有効投票中に混入されたときは、それ等無効投票を各當選者の得票から差引いて見て、最高位落選者より下位となる者は、これを當選者と決定することはできないのである。 三 若し論旨のように一人で二ケ所に住所を有することができるものと解すれば同一人が二ケ所村で選舉權を行使し或は同一町村で二つの選舉權を行使し得る結果となり、かゝる結果は町村制の認めないところであつて(町村制第一二條第二項參照)選舉に關しては住所は一人につき一ケ所に限定されるものと解すべきである。
一 町村制によつて行われた選舉についての地方自治法施行後の異議申立期間 二 無資格者その他による投票があつた場合の當選人決定の方法 三 選舉人の住所の數
地方自治法66條1項,町村制27條1項,町村制12條
判旨
選挙における帰属不明の無効投票が混入した場合、それらを特定の候補者の得票から差し引くと仮定して、最高位落選者の得票数を下回る可能性がある者は、有効投票の最多数を得た者(当選者)とは認められない。また、選挙権の要件たる「住所」は、二重投票を防止する観点から、選挙に関しては一人につき一箇所に限定される。
問題の所在(論点)
1. 帰属不明の無効投票が混入した場合における当選の効力の判断基準(当選者の確定方法)。 2. 地方自治法(旧町村制)上の選挙権の要件たる「住所」が、一人について複数認められるか。
規範
1. 帰属不明の無効投票がある場合、当該無効投票が特定の当選者の得票中に集中して混入した可能性を想定し、その得票から当該無効投票数を差し引いた結果、最高位落選者の得票数を下回る可能性がある者は、法的に確実な当選者と断定できない。 2. 選挙権の基礎となる「住所」は、同一人が複数箇所で選挙権を行使することを防ぐ趣旨から、一人につき一箇所に限定して解釈すべきである。
事件番号: 昭和23(オ)123 / 裁判年月日: 昭和25年11月9日 / 結論: 棄却
一 選挙権のない者又はいわゆる代理投票をした者の投票についても、その投票が何人に対してなされたかは、議員の当選の効力を定める手続において取り調べてはならない。 二 無資格者その他による帰属不明の無効投票が他の有効投票中に混入されたときは、それから無効投票を各当選者の得票から差し引いてみて最高位落選者より下位となる者は、…
重要事実
町村制に基づき行われた町村会議員選挙において、代理投票や無資格者(住所がない者)による投票計11票が有効投票に混入した。この11票が誰に投じられたかは不明であった。当選者A1〜A4の得票数(124票〜114票)から、仮にこの11票全てが一人に集中して混入していたと仮定して差し引くと、最高位落選者F(114票)の得票数を下回る状況であった。また、一部の投票者は勤務先や嫁ぎ先に実態があり、実家や郷里には住民としての実態が乏しかったが、名簿登載を理由に二重の住所(選挙権)を主張した。
あてはめ
1. 本件では11票の帰属が不明であり、可能性としてこの全てが当選者A1等の得票に含まれていることが否定できない。この場合、A1等の有効得票はFを下回ることになる。確実な当選者といえるためには、最悪の可能性(無効票の集中混入)を想定してもなお落選者を上回る必要があるが、本件A1らはその条件を満たさない。 2. 住所について、社会生活上複数の拠点を持ちうるとしても、選挙制度上は二重投票の弊害を避けるべきである。選挙当日、他の市町村に勤務先や嫁入先がありそこを生活の根拠としている以上、本町には住所がないと解するのが相当であり、選挙人名簿への登載のみを理由に住所を認めることはできない。
結論
1. 無効投票を差し引いた結果、落選者より下位になる可能性がある者は当選者とは決定できない。 2. 選挙に関する住所は一人につき一箇所に限定され、本件の無資格者らは選挙権を有しない。
実務上の射程
当選無効訴訟において、無効票の混入が選挙結果に異動を及ぼすか否かの判断(いわゆる「異動の可能性」)に関するリーディングケースである。特に、複数の当選者について一括して検討するのではなく、個別の候補者ごとに「最も不利な状況(無効票の集中)」を想定して当選の確実性を判断する実務慣行の基礎となっている。
事件番号: 昭和27(オ)913 / 裁判年月日: 昭和28年3月26日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】帰属不明の潜在無効投票がある場合、各候補者の有効投票数の計算は、公職選挙法209条の2に基づき、各候補者の得票数に応じて当該無効投票数を按分して差し引くべきである。 第1 事案の概要:昭和26年の町議会議員選挙において、上告人Aは96票で当選し、訴外Eは95票で次点落選した。Eが当選無効を求めて提…
事件番号: 昭和37(オ)1083 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: その他
候補者中に鳥山DとE酉之助がある場合に、「トリ」と記載された投票に公職選挙法第六八条の二を適用し、両者の得票に按分加算することはできない。
事件番号: 昭和27(オ)692 / 裁判年月日: 昭和28年3月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】帰属不明の無効投票が混入している場合、改正公職選挙法に基づき、各候補者の得票数から当該無効投票数を各候補者の得票数に応じて按分して差し引いた上で当選の効力を判断すべきである。 第1 事案の概要:昭和26年4月に実施された青森県北津軽郡D議会議員一般選挙において、投票中に25票の「潜在的無効投票(帰…
事件番号: 昭和31(オ)1069 / 裁判年月日: 昭和32年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙管理執行の違法が広範囲にわたり、不正投票の総数も不明で選挙全体の自由公正が著しく害された場合には、当選人の得票数と無効票数を具体的に対比することなく、公職選挙法205条1項に基づき選挙を無効とすべきである。 第1 事案の概要:町議会議員選挙において、特定の投票所の投票立会人全員及び受付係が、少…