買主が原判示規模の居宅(原判決理由参照)の敷地として使用する目的を表示して買い受けた土地の約八割の部分が都市計画街路の境域内に存するため、たとえ買主が右居宅を建築しても、早晩、都市計画事業の実施により、その全部または一部を撤去しなければならない場合において、右計画街路の公示が、売買契約成立の一〇数年以前に、告示の形式でなされたものであるため、買主において買受土地中の前記部分が右計画街路の境域内に存することを知らなかつたことについて過失があるといえないときは、売買の目的物に隠れた瑕疵があると解するのが相当である。
売買の目的土地の大部分が都市計画街路の境域内に存するために売買の目的物に隠れた瑕疵があるとされた事例。
民法570条
判旨
売買の目的物である土地の大部分が都市計画街路の区域内にあり、建物を建築しても将来撤去を免れない場合は「瑕疵」に当たり、公示から長期間経過していても買主がこれを知らないことに過失がない限り「隠れた」ものといえる。
問題の所在(論点)
都市計画街路の区域内であるという法律上の制限が民法570条の「瑕疵」に当たるか。また、10数年前に告示されている場合、買主がこれを知らなかったことに過失があり「隠れた」瑕疵といえないのではないか。
規範
民法570条(現562条以下)にいう「瑕疵」とは、目的物が通常有すべき性質や品質を欠いていることをいい、法律上の制限により契約の目的が達成できない場合も含まれる。また、瑕疵が「隠れた」ものであるかは、買主が通常要求される程度の注意を払っても瑕疵を認識し得なかったか否かで判断し、行政上の公示の有無のみをもって直ちに過失を認めるべきではない。
重要事実
買主(被上告人)は、永住用居宅の敷地として使用する目的を表示して売主(上告人)から土地を買い受けた。しかし、当該土地の約8割が都市計画街路の区域内に位置しており、建物を建築しても将来的に事業が実施されれば建物を取り壊さなければならない状態にあった。なお、この都市計画は売買の10数年前に告示されていたが、買主はその事実を知らなかった。
あてはめ
本件土地は、その大部分が道路敷地に該当し、建築した建物の全部または一部をいずれ撤去しなければならない。これは「居宅の敷地」として使用するという契約の目的を達することを不可能にするものであるから、土地の瑕疵に当たる。また、都市計画が告示形式でなされていたとしても、それが売買の10数年も前になされたものであるという事情を考慮すれば、買主が調査を尽くさず知らなかったとしても、直ちに過失があるとはいえず、瑕疵の隠密性は維持される。
結論
本件土地の制限は「隠れた瑕疵」に当たり、買主は売主に対し瑕疵担保責任(現・契約不適合責任)を追及できる。
実務上の射程
改正民法下でも「種類、品質または数量に関する不適合」の判断において、本判例の「使用目的との対照」という枠組みは有効である。特に、行政上の制限が公示されている場合でも、告示からの経過期間や具体的取引状況によっては、買主の善意無過失(または不適合についての不知)が肯定され得る点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和36(オ)1417 / 裁判年月日: 昭和39年1月24日 / 結論: 棄却
買主の違約があつても、売主が手附没収の意思表示をするまでは、売買契約は終了しないから、その後において売主の債務がその責に帰すべき事由によつて、履行不能となつた場合には、買主は手附倍戻しの請求ができる。