候補者D道男の長男でその地方において著名人であるD道太の氏名に合致する記載のある投票は、原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、無効と解すべきである。
候補者の氏名に近似するがその候補者の子の氏名に合致する記載のある投票を無効と認めた事例。
公職選挙法68条
判旨
候補者以外の実在する親族の氏名が記載された投票は、その親族が立候補したと考える選挙人があり得ない等の特段の事情がない限り、候補者の氏名の誤記とは断定できず、無効投票となる。
問題の所在(論点)
公職選挙法上の投票の効力に関し、候補者(D道男)の氏名ではなく、その実子であり著名人でもある非候補者(D道太)の氏名が記載された投票を、候補者への有効投票として算入できるか。
規範
自書式投票において、記載された氏名が候補者以外の実在する人物(特に候補者の親族等)の氏名と合致する場合、当該投票を候補者への有効投票と認めるためには、単に候補者の氏名の誤記であると推測されるだけでは足りない。選挙人が候補者以外の当該人物に投票する意思を持つ可能性が否定できない限り、客観的な記載内容に従い、候補者への投票としては無効と解すべきである。
重要事実
市長選挙において、候補者「D道男」の長男で、地元で代議士として著名な「D道太」の氏名が記載された投票(D道太票)が計254票存在した。上告人は、市長といえば父の道男を指すのが地域の実情であり、道太が市長選に立候補したと考える選挙人はおらず、これらは道男の氏名の誤記であるとして有効投票に算入すべきだと主張した。
事件番号: 昭和32(オ)467 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】候補者の氏名に類似する実在の他人の氏名が記載された投票であっても、諸般の事実を総合して当該候補者への投票の意思が認められる場合には、当該候補者の有効投票と解すべきである。 第1 事案の概要:選挙において「B一郎」と記載された投票が52票あった。本件選挙には「B永一郎」という候補者が存在したが、一方…
あてはめ
D家は地元の名家であり、父・道男と子・道太は共に著名人である。地域住民において「市長選=父」という認識が十分に定着し、子が立候補したと考えるはずがないとまでは認められない。氏名が近似する親族間では誤認混同の恐れがあるため、道太票の全てが道男の誤記であるとは断定できない。道太に投票する意思を持つ選挙人が存在した疑いを払拭できず、どの程度が誤記でどの程度が表示通りの人物宛てかを判別する根拠もない以上、これらを道男の得票に算入することは許されない。
結論
D道太票は、候補者D道男に対する有効投票とは認められず、無効投票となる。
実務上の射程
候補者以外の実在の人物名が書かれた投票の有効性判断の射程を示す。氏名が酷似する親族等が周囲に存在する場合、客観的な記載を優先し、主観的な「誤記の可能性」のみでは有効投票と認められないという、厳格な認定枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和40(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和40年9月21日 / 結論: 棄却
一 「モリヤゲン」と記載された投票は、候補者守Bが「モリゲン」の通称を有する以上、他に候補者守屋Dがあり、また右Bの父で同じく「モリゲン」の通称を有する守Eに判示の事情が認められるとしても、これを候補者守Bの得票と認めるのが相当である。 二 候補者丹野Fが屋号を丹長と称し、「(記載内容は末尾添付)」をその記号として使用…
事件番号: 昭和40(行ツ)16 / 裁判年月日: 昭和40年6月18日 / 結論: 棄却
Dという姓を同じくし、武一、文三と名を異にする候補者のある場合に、「D文一」、「文一」「D文一(ブンイチ)」と記載された各投票は、帰属を決しがたい無効投票と解するのが相当である。
事件番号: 昭和35(オ)442 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙人の意思を可能な限り尊重し、記載から特定の候補者を選ぶ意思が確認できる場合は有効とすべきであるが、同一の氏を称する候補者が複数存在する状況下で、記載された名が特定の候補者のものと認められず、かつ他候補者との区別が不明な投票は、無効と解するのが相当である。 第1 事案の概要:本件選挙には、「D」…
事件番号: 昭和33(オ)1119 / 裁判年月日: 昭和34年3月30日 / 結論: 破棄差戻
佐賀県モーターボート競走会会長辞任の意思表示が会長のみを辞任する趣旨のものか理事をも辞任する趣旨のものであるかは、同会役員選任手続に関する慣習や辞任の動機等をも考慮して真意に副うように解釈すべきである。