佐賀県モーターボート競走会会長辞任の意思表示が会長のみを辞任する趣旨のものか理事をも辞任する趣旨のものであるかは、同会役員選任手続に関する慣習や辞任の動機等をも考慮して真意に副うように解釈すべきである。
佐賀県モーターボート競走会会長辞任の意思表示の解釈。
地方自治法142条(昭和31年法律147号による改正前),公職選挙法104条(昭和31年法律148号による改正前)
判旨
意思表示の解釈にあたっては、従来の慣習や動機等を考慮し、論理則および経験則に従って表意者の真意を探求すべきであり、特段の事情がない限り、原因関係と密接に関わる地位の辞任はその根底にある地位の辞任をも含むと解される。
問題の所在(論点)
会長職の辞任の意思表示が、その前提となる理事職の辞任をも含むものと解釈されるべきか。書面の文言を超えた表意者の真意探求の要否と、その判断要素が問題となる。
規範
意思表示の解釈は、書面の文言のみに拘泥せず、従来の慣習、辞任の動機、および諸般の事情を考慮して、論理の法則と経験則に従い表意者の真意を探求して、できるだけその意思に副うように解釈すべきである。特に、ある地位が他の地位に基づき、またはこれと一体として選任される慣例がある場合、特段の合理的理由がない限り、その上位の地位を辞任する意思は、前提となる地位をも含めて辞任する趣旨であると解するのが合理的である。
重要事実
佐賀県モーターボート競走会の会長を務めていた原告が、市長との兼職禁止規定を回避する動機から、会長職を辞任する旨の意思表示を行った。同会では、理事の互選を経ずに単に会長を直接選任する慣例があった。原審は、辞任届に「会長を辞任する」とのみ記載されていたことを根拠に、内部名称に過ぎない会長職のみを辞任し、地方自治法142条の兼職禁止対象となる理事の地位は保持していると認定した。
事件番号: 昭和32(オ)384 / 裁判年月日: 昭和32年12月3日 / 結論: 破棄差戻
D市長が佐賀県E競走会会長理事の地位に就くことは地方自治法第一四二条に違反し許されない。
あてはめ
本件において、会長選任の慣例によれば会長職は理事の地位と密接不可分であり、かつ辞任の動機が市長との兼職禁止を回避することにあったことに照らせば、会長職のみを辞任し理事職を留保することは客観的な動機と矛盾する。そうであれば、理事職を特に留保する特段の合理的理由が示されない限り、会長の辞任は理事の辞任をも包含すると解するのが経験則に合致する。原審が単に書面の記載のみから会長のみの辞任と認定したのは、審理不尽による理由不備の違法がある。
結論
従来の慣習や辞任の動機に照らし、特段の事情がない限り、会長の辞任は理事の辞任も含むと解釈されるべきであるとして、原判決を破棄し差し戻した。
実務上の射程
意思表示の解釈に関する一般原則(民法91条、153条関連)を示す。答案上は、文言が不明確な場合や、文言と背後の動機が矛盾する場合に、慣習・動機・経験則を用いた真意探求の枠組みとして引用する。特に「特段の事情」がない限り、目的達成のために必要な範囲で意思表示の効果を広く(あるいは限定的に)認める際の論理として有用である。
事件番号: 昭和39(行ツ)69 / 裁判年月日: 昭和40年2月9日 / 結論: 棄却
候補者D道男の長男でその地方において著名人であるD道太の氏名に合致する記載のある投票は、原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、無効と解すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)467 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】候補者の氏名に類似する実在の他人の氏名が記載された投票であっても、諸般の事実を総合して当該候補者への投票の意思が認められる場合には、当該候補者の有効投票と解すべきである。 第1 事案の概要:選挙において「B一郎」と記載された投票が52票あった。本件選挙には「B永一郎」という候補者が存在したが、一方…
事件番号: 昭和31(オ)601 / 裁判年月日: 昭和31年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政訴訟において、数個の投票の効力が争われている場合、一部の投票に関する判断に誤りがあっても、他の有効な判断によって結論に影響を及ぼさないときは、判決の結果を左右しない。 第1 事案の概要:当選の効力が争われた事案において、原審は複数の投票(甲第1号証、甲第3号証等)の効力を個別に判断した。上告人…
事件番号: 昭和40(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和40年9月21日 / 結論: 棄却
一 「モリヤゲン」と記載された投票は、候補者守Bが「モリゲン」の通称を有する以上、他に候補者守屋Dがあり、また右Bの父で同じく「モリゲン」の通称を有する守Eに判示の事情が認められるとしても、これを候補者守Bの得票と認めるのが相当である。 二 候補者丹野Fが屋号を丹長と称し、「(記載内容は末尾添付)」をその記号として使用…