D市長が佐賀県E競走会会長理事の地位に就くことは地方自治法第一四二条に違反し許されない。
D市長が佐賀県E競走会会長理事の地位に就くことの適否
地方自治法142条(昭和31年法律147号による改正前のもの),モーターボート競走法(昭和32年法律170号による改正前のもの)3条,モーターボート競争法(昭和32年法律170号による改正前のもの)21条
判旨
普通地方公共団体の長は、当該自治体と請負関係にある社団法人の役員を兼ねることはできず、地方自治法142条が準用する同法166条2項(現行142条の準用規定)の制限に抵触する。
問題の所在(論点)
普通地方公共団体の長が、当該自治体から事務の委託を受けている社団法人の代表者(会長理事)を兼ねることが、地方自治法142条(および長への準用規定)に規定される「主として同一の普通地方公共団体に対して請負をする者」または「その営利を目的とする法人の無限責任社員、取締役等」に抵触するか。
規範
地方自治法142条(および長への準用規定)の趣旨は、普通地方公共団体の議会の議員や長が、当該自治体に対して請負をする者等の地位を兼ねることで、職務執行の公正さを害し、不当な利益を得るおそれを防止することにある。したがって、自治体と実質的に請負関係にある団体の代表者等の地位に就くことは、同条に抵触するものと解すべきである。
重要事実
D市の市長が、同市からモーターボート競走の運営等に関する業務を委託されている「社団法人佐賀県E競走会」の会長理事に就任していた。当該競走会とD市との間には、モーターボート競走法の規定および契約に基づき、業務執行に伴う対価や責任関係を含む実質的な請負関係が認められる状態にあった。
事件番号: 昭和33(オ)1119 / 裁判年月日: 昭和34年3月30日 / 結論: 破棄差戻
佐賀県モーターボート競走会会長辞任の意思表示が会長のみを辞任する趣旨のものか理事をも辞任する趣旨のものであるかは、同会役員選任手続に関する慣習や辞任の動機等をも考慮して真意に副うように解釈すべきである。
あてはめ
D市と本件社団法人との関係について、モーターボート競走法の各関係規定(2条、19条、26条等)および施行令の諸規定に照らすと、両者の間には具体的な権利義務を伴う契約関係が存在する。契約書の条項によれば、当該法人はD市の事務を実質的に引き受ける請負的性質を有している。このような関係性がある以上、D市長が当該法人の長たる会長理事の地位に就くことは、地方自治法142条が禁じる「公正な職務執行を阻害するおそれのある地位の兼職」に該当すると評価される。
結論
D市の長たる市長は、社団法人佐賀県E競走会の会長理事の地位に就くことは許されない。
実務上の射程
地方自治法142条の「請負」の意義を、形式的な営利企業だけでなく、実質的に自治体から事務を請け負う社団法人の役員等にも広げて解釈する際の根拠となる。ただし、現在の地方自治法142条は改正により「主として」の要件等が明文化されており、あてはめにおいては現行法の文言に留意する必要がある。
事件番号: 昭和32(オ)467 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】候補者の氏名に類似する実在の他人の氏名が記載された投票であっても、諸般の事実を総合して当該候補者への投票の意思が認められる場合には、当該候補者の有効投票と解すべきである。 第1 事案の概要:選挙において「B一郎」と記載された投票が52票あった。本件選挙には「B永一郎」という候補者が存在したが、一方…
事件番号: 昭和35(オ)442 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙人の意思を可能な限り尊重し、記載から特定の候補者を選ぶ意思が確認できる場合は有効とすべきであるが、同一の氏を称する候補者が複数存在する状況下で、記載された名が特定の候補者のものと認められず、かつ他候補者との区別が不明な投票は、無効と解するのが相当である。 第1 事案の概要:本件選挙には、「D」…
事件番号: 昭和35(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票用紙に候補者の氏名のほか「江」という敬称を付す記載は、公職選挙法68条5号の他事記載に該当し無効である。一方で、氏名の誤記や他候補者の氏名との混同がある場合でも、他候補者の氏名等と比較して特定の候補者に対する投票意思が認められれば有効となる。 第1 事案の概要:村長選挙の効力に関する訴訟におい…
事件番号: 昭和39(行ツ)69 / 裁判年月日: 昭和40年2月9日 / 結論: 棄却
候補者D道男の長男でその地方において著名人であるD道太の氏名に合致する記載のある投票は、原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、無効と解すべきである。