「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和二四年法律第二一四号による改正前)第一〇条により他社の株式取得の制限を受けている事業会社が、その所有に係る他社の株式についての増資新株を自ら取得できないため、自社の重役等個人に無償で取得させた場合において、同社になんら利得をもたらさないことを理由として、右行為に基づき同社に法人所得の益金を生ずる余地がないとすることはできない。
法律上他社の株式取得の制限を受けている会社が所有株式についての増資新株を自社重役等に無償で取得させた場合における課税所得の算定
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和24年法律214号による改正前)10条,法人税法(昭和22年法律28号)9条
判旨
法人が新株引受権等の経済的利益を無償で供与した場合、当該利益が未計上の資産価値を構成する限り、その社外流出に際して適正な価額を付して資産に計上すべきであり、対価の有無にかかわらず当該年度の益金を構成する。
問題の所在(論点)
法人が新株引受権等の経済的利益(新株プレミアム分)を無償で役員等に供与した場合において、当該利益が法人の未計上資産の流出といえるとき、反対給付(対価)がなくても当該年度の益金が計上されるか。法人税法(旧法)における益金の意義が問題となる。
規範
法人が所有する資産(新株引受権等の経済的利益を含む)を社外に流出させる際、その資産に未計上の含み益が存在する場合には、その流出の限度において隠れていた資産価値を顕現させ、適正な価額を付して資産に計上しなければならない。このような隠れた資産価値の計上は、当該事業年度において資産を増加させ、対価たる反対給付の有無にかかわらず、その増加額に相当する金額は「益金の額」に算入される。
重要事実
一般事業会社である被上告人は、当時、独占禁止法の規定により他社の増資新株を自ら取得することが制限されていた。そこで、被上告人は自社の重役等に対し、信託的に株式を譲渡して株主名義を書き換える方法や、第三者指名権を行使して重役を指名する方法により、重役らに増資新株を取得させた。原審は、この行為により経済的価値のある利益が重役らに移転したと認定したが、被上告人になんら利得をもたらさないとして、法人税法上の益金の発生を否定した。
事件番号: 昭和37(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 破棄自判
青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。
あてはめ
本件における新株の割当を受ける地位(第三者指名権等)は、金銭に見積もれる経済的利益であり、株式の新株プレミアムから構成される。この利益の移転は、法人が保有する株式の値上がり部分(含み益)という「未計上の資産」が社外に流出することを意味する。社外流出にあたっては、隠れていた資産価値を確定して資産計上すべきであり、これにより資産が増加するため、益金が顕現する。この理は、重役等から対価を得ていない無償譲渡の場合であっても、資産の増減を明確に把握する必要がある以上、同様に当てはまる。
結論
被上告人が重役等に移転した利益に未計上の資産価値が含まれる限り、当該事業年度においてそれに相当する益金の発生を肯定すべきである。
実務上の射程
法人税法22条2項における「無償による資産の譲渡」等が益金を構成するという基本的考え方を、新株引受権等の無体な経済的利益の供与についても適用した重要判例である。答案上は、資産の含み益が具体化(実現)する局面において、対価の有無を問わず、時価による資産の流出と受贈益の供与が同時並行で行われたと構成する「二段階構成」の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)735 / 裁判年月日: 昭和33年6月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】推計課税において、特段の事情がない限り仕入品の利益率から売上品の利益率を推定することは合理的であり、課税庁が更正時に使用しなかった資料であっても、それが所得を適正に推計し得るものである限り、更正の正当性を基礎付ける証拠として用いることができる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和26年度の所得税につ…
事件番号: 昭和35(オ)49 / 裁判年月日: 昭和35年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他名義の預金の存在や、所得率が著しく低いこと等は、所得税法上の青色申告承認の取消事由に該当し、当該取消処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人は青色申告の承認を受けていたが、税務署長(被上告人)は、DおよびEという他人の名義を用いた別途預金が存在していること、および所得率が実態に比して著しく過…
事件番号: 昭和41(行ツ)44 / 裁判年月日: 昭和45年10月23日 / 結論: 破棄差戻
借地権の設定に際して土地所有者が支払を受ける権利金は、その設定契約において長期の存続期間を定め、かつ、借地権の譲渡性を承認する等所有者が当該土地の使用収益権を半永久的に手離す結果となる場合に、その対価として更地価格のきわめて高い割合にあたる金額の支払を受けるというような、明らかに所有権の権能の一部を譲渡した対価としての…