借地権の設定に際して土地所有者が支払を受ける権利金は、その設定契約において長期の存続期間を定め、かつ、借地権の譲渡性を承認する等所有者が当該土地の使用収益権を半永久的に手離す結果となる場合に、その対価として更地価格のきわめて高い割合にあたる金額の支払を受けるというような、明らかに所有権の権能の一部を譲渡した対価としての経済的実質を有するものでないかぎり、昭和三四年法律第七九号による改正前の旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)九条一項八号にいう譲渡所得にあたるものと解することは許されない。
借地権の設定に際して授受される権利金と昭和三四年法律第七九号による改正前の旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)九条一項八号にいう譲渡所得
昭和34年法律第79号による改正前の旧所得税法(昭和22年法律第27号)9条1項3号,昭和34年法律第79号による改正前の旧所得税法(昭和22年法律第27号)9条1項8号
判旨
借地権設定の際、所有者が使用収益権を半永久的に手離す結果となり、更地価格の極めて高い割合に当たる権利金が支払われる等の事情がある場合、当該権利金は「譲渡所得」に当たると類推解釈すべきである。
問題の所在(論点)
借地権設定に際して授受される権利金が、旧所得税法9条における「不動産所得」に該当するか、それとも「譲渡所得」に該当するか。特に、経済的実質に基づき譲渡所得と類推解釈することが許されるか。
規範
借地権設定の対価として支払われる権利金は、文言上は不動産所得に該当し得る。しかし、①借地権設定契約が長期の存続期間を定め、かつ借地権の譲渡性を承認するものである等、所有者が土地の使用収益権を半永久的に手離す結果となる場合であり、②その対価として更地価格の極めて高い割合(概ね半額以上)に当たる金額が支払われるときには、経済的実質において所有権の権能の一部を譲渡した対価と認められる。このような場合、公平な課税の観点から、旧所得税法9条1項7号の「譲渡所得」に当たると類推解釈するのが相当である。ただし、性質が曖昧なものは原則通り不動産所得とする。
事件番号: 昭和43(行ツ)25 / 裁判年月日: 昭和46年11月9日 / 結論: 棄却
利息制限法による制限超過の利息・損害金は、その約定の履行期が到来しても、なお未収であるかぎり、旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)一〇条一項にいう「収入すべき金額」に該当せず、課税の対象となるべき所得を構成しない。
重要事実
納税者(被上告人)は、昭和33年に株式会社Dに対して土地を貸し付け、その際、権利金を受領した。当時の所得税法(昭和34年改正前)では、借地権設定に伴う権利金が「不動産所得」か「譲渡所得」かについての明文規定がなかった。原審は、当該権利金の具体的な性質を精査することなく、その後の法改正の趣旨を先取りして譲渡所得に当たると判断したため、課税庁側が上告した。
あてはめ
本件権利金が譲渡所得に当たるというためには、単に納税者に有利という理由だけでは足りない。当該土地の更地価格に対する権利金の割合、契約期間、譲渡性の有無等の具体的事実を確定し、それが実質的に「所有権の権能の一部の譲渡」といえるかを検討する必要がある。原審は、本件権利金の性質を確定しないまま漫然と譲渡所得と判断しており、類推解釈の適用範囲を誤り、審理不尽の違法があるといえる。
結論
借地権設定の権利金であっても、実質的に所有権の一部譲渡と認められる特段の事情がある場合に限り、例外的に譲渡所得としての類推解釈が可能である。本件は性質の確定が不十分であり、原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
課税要件明確主義の観点から文言解釈が原則とされる租税法において、例外的に「経済的実質」に基づく類推解釈を認めた重要判例。答案では、文言上の形式的解釈(不動産所得)を示した上で、実質的な所得の性質(譲渡所得)へのあてはめを行う際に、更地価格比率や存続期間、譲渡承認の有無といった考慮要素を具体的に摘示する。現在の所得税法施行令79条等の解釈指針としても機能する。
事件番号: 昭和39(行ツ)6 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
破産宣告後の原因に基づく破産者の所得に課せられた所得税は、破産法第四七条第二号但書にいう「破産財団ニ関シテ生シタル」請求権にあたらない。
事件番号: 昭和36(オ)944 / 裁判年月日: 昭和43年11月13日 / 結論: 棄却
いわゆる株主相互金融を営む会社において、融資を希望しない株主に対し「株主優待金」の支払をしても、法人税法上は、その支出を会社の損金に算入することは許されない。
事件番号: 昭和41(行ツ)8 / 裁判年月日: 昭和43年10月31日 / 結論: 棄却
旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)第五条の二の規定は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得とし、それを右資産の他への移転の時期において課税の対象とするのを相当と認め、それが対価を伴わずに移転される場合にもいわゆる譲渡所得に準じて取り扱うべきものとしたのであつて、所得のないところに課税所得の存在を擬…
事件番号: 昭和37(オ)255 / 裁判年月日: 昭和41年6月24日 / 結論: 破棄差戻
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和二四年法律第二一四号による改正前)第一〇条により他社の株式取得の制限を受けている事業会社が、その所有に係る他社の株式についての増資新株を自ら取得できないため、自社の重役等個人に無償で取得させた場合において、同社になんら利得をもたらさないことを理由として、右行為に基づ…